PubMedID 32762399
タイトル A chemical genomics-aggrephagy integrated method studying functional analysis of autophagy inducers.
ジャーナル Autophagy, 2020 Aug 07;1-17, [Epub ahead of print]
著者 Kataura T, Tashiro E, Nishikawa S, Shibahara K, Muraoka Y, Miura M, Sakai S, Katoh N, Totsuka M, Onodera M, Shin-Ya K, Miyamoto K, Sasazawa Y, Hattori N, Saiki S, Imoto M
  • ケミカルゲノミクス・アグリファジー活性によるオートファジー誘導剤の統合的機能解析
  • Posted by 慶應義塾大学理工学部生命情報学科(現・順天堂大学医学部) 片浦哲志
  • 投稿日 2020/08/12

最近発表した私たちの論文を紹介させて頂きます.この研究は,順天堂大学医学部神経学講座 斉木臣二准教授,服部信孝教授らとの共同研究です.

これまで多数のオートファジー誘導剤が同定・報告されてきましたが,これらの誘導機構の多くは不明でした.そこで本研究ではその解析のために,オートファジー誘導剤を誘導メカニズムに基づき分類し,その特性を解析するケミカルゲノミクスの手法を用いました.具体的にはスクリーニングにより同定した26種のオートファジー誘導剤によるオートファジーがどのような情報伝達阻害剤で抑制されるか,200種類の情報伝達系阻害剤を用いて評価しました.得られた定量データを主成分分析や階層的クラスタリングを用いて解析することで,オートファジー誘導剤を分類するとともにどのようなシグナル伝達経路がこの分類に寄与するかを調べました.この解析の結果,アルツハイマー治療薬であるメマンチンや,ヒスタミン拮抗薬であるクレマスチンが小胞体ストレス応答の活性化を介してオートファジーを誘導することを示すことが出来ました.さらに,本研究で新規オートファジー誘導剤として同定したSMK-17が,PKCの活性化を介したmTOR非依存的なTFEBの活性化によりオートファジーを誘導することを明らかにしました.最後に,26種のオートファジー誘導剤による神経変性疾患モデルでの薬理活性(アグリファジー活性)を評価しました.その結果,解糖系阻害剤・プロテアソーム阻害剤を除く23化合物がパーキンソン病モデル細胞,およびハンチントン病モデル細胞で蓄積した異常タンパク質凝集体をクリアランスすることが分かりました.以上の研究を通して,ケミカルゲノミクスの手法を用いたオートファジー誘導機構の研究手法を提示するとともに,23種のオートファジー誘導剤による神経変性疾患治療薬としての可能性を示唆しました.
また本研究に際し,GFP-LC3-RFPオートファジープローブをご供与下さいました水島先生,先端モデル動物支援プラットフォーム(AdAMS)に厚く御礼申し上げます.