オートファジーの集学的研究:分子基盤から疾患まで(Multidisciplinary research on autophagy: from molecular mechanisms to disease states)

文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型)
平成25年度~平成29年度

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オートファジーの生理・病態生理学的意義とその分子基盤

代表者 水島 昇(東京大学・医学系研究科・教授)

水島 昇

最近のオートファジー研究の躍進によってオートファジーの基本フレームが理解されるようになったが、残された課題や新たに見つかった課題が多く存在する。特にオートファゴソーム形成場の生化学的・形態学的特性、オートファゴソームと他のオルガネラとの連携、選択的基質のリクルート機構、オートファゴソームとリソソームとの融合機構については不明な点が多い。また、個体レベルでのオートファジーの生理機能の理解もまだ進展途中である一方で、既知の型のオートファジーに依存しない新規のリソソーム分解系も見つかってきている。そこで、本研究課題ではこれらの課題の解明をめざした分子細胞生物学的解析、および分子基盤に基づいたオートファジーおよびリソソーム関連新規分解系のマウス個体を用いた機能解析を行い、オートファジーの基本生理機能とヒト疾患の病態形成における役割を理解することを目指す。

関連論文

  • *Saitsu H, Nishimura T, Muramatsu K, Kodera H, Kumada S, Sugai K, Kasai-Yoshida E, Sawaura N, Nishida H, Hoshino A, Ryujin F, Yoshioka S, Nishiyama K, Kondo Y, Tsurusaki Y, Nakashima M, Miyake N, Arakawa H, Kato M, *Mizushima N, *Matsumoto N. De novo mutations in the autophagy gene encoding WDR45 (WIPI4) cause static encephalopathy of childhood with neurodegeneration in adulthood. Nat. Genet. 45: 445-449 (2013).
  • Itakura E, Kishi-Itakura C, *Mizushima N. The hairpin-type tail-anchored SNARE syntaxin 17 targets to autophagosomes for fusion with endosomes/lysosomes. Cell 151: 1256-1269 (2012).
  • Takamura A, Komatsu M, Hara T, Sakamoto A, Kishi C, Waguri S, Eishi Y, Hino O, Tanaka K, *Mizushima N. Autophagy-deficient mice develop multiple liver tumors. Genes Dev 25: 795-800 (2011).
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分担者 塚本 智史(放射線医学総合研究所・主任技術員)

塚本 智史

ほ乳動物の発生や分化におけるオートファジーの役割については、未だ不明な点が多い。本研究ではマウスの初期胚発生と精子形成過程におけるオートファジーの役割に着目する。受精直後には卵細胞質にあらかじめ満たされた母性由来のタンパク質が大規模に分解され、胚由来のタンパク質へと入れ替わることが重要である。これまでの研究から受精直後には活発にオートファジーが起こっており、この時期のオートファジーを特異的に欠損した受精卵は着床前致死になることが明らかになっている。しかし、受精直後のオートファジー誘導を制御する分子メカニズムの全貌については未だよく分かっていない。一方で精子形成過程では、精細胞は短期間のうちにダイナミックにその形態を変化させる。最近の研究からオートファジーが精子形成過程でも誘導されることが分かってきた。精細胞の細胞質リモデリングの亢進や精子形成を維持するための栄養供給などにオートファジーが関与している可能性が考えられる。そこで本研究では、受精直後に起こるオートファジーの誘導メカニズムと精子形成過程におけるオートファジーの生理学的意義について、遺伝子改変マウスや発生工学手法を駆使して明らかにする。

関連論文

  • *Tsukamoto S, Hara T, Yamamoto A, Ohta Y, Wada Y, Ishida Y, Kito S, Nishikawa T, Minami N, Sato K, Kokubo T. Functional analysis of lysosomes during mouse preimplantation embryo development. J Reprod Dev 59: 33-39 (2013).
  • Tsukamoto S, Kuma A, Murakami M, Kishi C, Yamamoto A, *Mizushima N. Autophagy is essential for preimplantation development of mouse embryos. Science 321: 117-120 (2008).
  • Tsukamoto S, Ihara R, Aizawa A, Kishida S, Kikuchi A, Imai H, *Minami N. Oog1, an oocyte-specific protein, interacts with Ras and Ras-signaling proteins during early embryogenesis. Biochem Biophys Res Commun 343:1105-1112 (2006).
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