Proteolysis Forum
トップ

PubMedID 24793651 Journal Nat Struct Mol Biol, 2014 May 4; [Epub ahead of print]
Title Structural basis of starvation-induced assembly of the autophagy initiation complex.
Author Fujioka Y, Suzuki SW, ..., Ohsumi Y, Noda NN
微生物化学研究所  分子構造解析部    藤岡優子     2014/05/07

Atg13を介したオートファジー始動機構の構造基盤
最近受理された私達の論文をご紹介させていただきます。この論文は東工大・大隅先生のグループ、横浜市立大・平野先生のグループ、北大・稲垣先生および山口大・赤田先生との共同研究です。

出芽酵母では、主にAtg1-Atg13-Atg17を構成因子とするAtg1複合体の形成がオートファジー始動の最初のステップです。飢餓依存的にAtg1複合体が形成されると、そこに下流のAtg因子群が集積することでPAS (pre-autophagosomal structure)が構築され、オートファゴーソームの形成が開始します。
今回、我々はAtg13におけるAtg1結合領域とAtg17結合領域を同定し、小型化したAtg1-Atg13複合体と Atg13-Atg17複合体の結晶構造解析を行いました。その結果、Atg13はMIT-interacting motif (MIM)を用いてAtg1のC末端にあるMITドメインが2つ並んだ球状構造に結合することが明らかになりました。一方、Atg13は別の短い領域(Atg17 binding region, 17BR)を用いて、弓状構造を取るAtg17上の酸性および疎水性残基に富むポケットに結合していました。
変異体解析の結果、Atg13MIMのAtg1MITへの結合は、Atg13MIMのC末端領域(MIM-C)に集積したセリン残基のリン酸化によって制御されていることがわかりました。一方、Atg13のAtg17への結合は、17BRにあるSer429のリン酸化によって制御されていることを突き止めました。これらの結果から、飢餓によるAtg13の脱リン酸化が、Atg1およびAtg17両者との結合を通してPASの形成、その結果としてオートファジーの始動を引き起こす分子機構の一端が明らかとなりました。
また、この論文ではKraftらによって最近提唱された「Atg1とAtg13は栄養条件に関わらず複合体を形成している」という説について改めて検証しています。我々が出した結論は以前と変わらず「飢餓条件ではAtg13が脱リン酸化してAtg1-Atg13複合体の量が増える」ということです。サンプルを注意深く調製し、artificialな脱リン酸化を防ぐことによってこのような結論が得られます。
哺乳類ではAtg1複合体に対応するULK1-Atg13-FIP200複合体は恒常的に存在しているようなので、今回明らかにした出芽酵母のAtg1-Atg13-Atg17複合体の制御機構にはあまり興味を持たれない方も多いかと思います。しかし論文にも示した通りULK1とAtg13の相互作用はMIT-MIMの相互作用と思われますし、Atg17と同様にFIP200もcoiled-coilタンパク質と予測されています。例え解離がなくとも、ULK1複合体内での結合相手のスイッチなどが飢餓依存的に起きている可能性は十分あるのではないかと思われます。個人的な印象ではAtg1複合体の形成にはAtg1-Atg13間の制御よりAtg13-Atg17間の制御の方が効いているような気がするので、Atg13-FIP200間になんらかのリン酸化による制御があれば面白いかなと思います。
   
   本文引用



Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局