Proteolysis Forum
トップ

PubMedID 30093494 Journal J Cell Biol, 2018 Aug 09; [Epub ahead of print]
Title as a gene required for autophagosome formation.
Author Morita K, Hama Y, ..., Mano H, Mizushima N
東京大学大学院医学系研究科分子細胞生物学専攻  分子生物学分野    守田啓悟     2018/08/16

ゲノムワイドスクリーニングによる新規ATG遺伝子TMEM41Bの同定
最近発表されました我々の論文を紹介いたします。本研究は東京大学大学院医学系研究科間野研究室(現国立がん研究センター)、同理学系研究科濡木研究室、東京医科歯科大学酒巻有里子氏と共同で行いました。

マクロオートファジー(以下、オートファジー)は非常に複雑な膜動態を経る過程です。そのため、数多くのオートファジー関連(ATG)タンパク質を必要とします。数多くのATG遺伝子は酵母や線虫などのモデル生物におけるスクリーニングで同定されてきました。一方、CRISPR (clustered regularly interspaced short palindromic repeat)-Cas9システム登場以前には哺乳類細胞における網羅的探索はsiRNAを用いるなど限られた手法によってしか行われてきませんでした。

本研究では、CRISPR-Cas9システムとオートファジー活性評価プローブ(GFP-LC3-RFP、 http://proteolysis.jp/a_forum/thread.php?id=95 )を用いて、ATG遺伝子の哺乳類細胞におけるゲノムワイドスクリーニングを行いました。CRISPR-Cas9システムによって網羅的遺伝子欠損細胞ライブラリを作成し、GFP-LC3-RFPを指標にオートファジー不全細胞をフローサイトメトリーで濃縮しました。次世代シーケンサーを用いて解析したところ、リダンダントではない既知ATG遺伝子を数多く同定することに成功しました(ATG3, ATG4B, ATG5, ATG7, ATG9A, ATG10, ATG12, ATG13, ATG14, ATG16L1, ATG101, and FIP200)。VPS15, EPG5, EI24といった非典型的ATG遺伝子やVPS16やVPS33AといったHOPS複合体に含まれる遺伝子、mTORC1のレギュレーター(TSC1, TSC2)、ESCRT(VPS37A)も同定され、スクリーニングが成功していることがわかりました。その上で、新規オートファジー関連因子としてTMEM41Bを発見しました。

TMEM41Bは既知ATGタンパク質であるVMP1と構造的に類似していました。両者とも小胞体に局在する複数回膜タンパク質であり、共通するドメイン(VTTドメイン:PfamではSNARE assocドメインとして定義されていますがSNAREとの関連を支持する証左がないため、今回新たに定義ました。ドメインを共有するVMP1, TMEM41B, Tvp38の頭文字をとっています)を有していました。TMEM41B欠損細胞ではVMP1欠損細胞と同様にオートファゴソーム形成初期で障害が認められました。伸長したオートファゴソーム様の構造は観察されず、初期ATG分子の蓄積と小胞の蓄積が観察されました。構造的特徴と表現型が類似していることに加えて、TMEM41BとVMP1はin vivoにおいてもin vitroにおいても結合していることが確認されました。加えてTMEM41B欠損細胞のオートファジー不全はVMP1の過剰発現によってレスキューされました。これらの結果からTMEM41BとVMP1は相互作用をしながら、オートファゴソーム形成の初期で機能していることが示唆されました。

なお、先日ペンシルベニア州立大学の高橋さんより、オートファゴソーム閉鎖とESCRTの関わりについての論文が発表されました(Nat Commun, 2018 Jul 20;9(1);2855, http://proteolysis.jp/a_forum/thread.php?id=129 )。私たちのスクリーニングでもESCRT複合体の一つであるVPS37Aが同定されており、実際に閉鎖に関わっていることを示唆するプレリミナリなデータは得られていました。しかし、なかなか確信を持てるデータが得られなかったことと、リソソーム障害とオートファゴソーム形成障害をきちんと区別できなかったことから、今回の論文にはふくめませんでした。論文がまとまりつつあるところで高橋さんの論文を拝見することになり、その手法の鮮やかさに感嘆するとともに、中途半端な実験系で押し切るのではなく基本的なところからきちんと構築していくことの大切さを学びました。
   
   本文引用



Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局