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PubMedID 31006538 Journal Mol Cell, 2019 Apr 11; [Epub ahead of print]
Title Intrinsically Disordered Protein TEX264 Mediates ER-phagy.
Author Chino H, Hatta T, Natsume T, Mizushima N
東京大学大学院医学系研究科分子細胞生物学専攻 分子生物学分  分子生物学教室(水島昇研究室)    千野遥     2019/05/08

オートファジーによる小胞体分解の新規受容体の発見
 初めての投稿ですが、宜しくお願い致します。 先日、私たちが発表した論文を紹介させていただきます。
オートファジーの選択性が徐々に明らかになり、オートファジーの意義に関する理解が深まってきました。今回、私たちは新規のオートファジーの基質を探索するため、LC3にLIR認識部位特異的に結合するタンパク質のスクリーニングを行い、新規の選択的基質であるTEX264を同定しました。

TEX264は小胞体膜タンパク質で細胞質側のC末端に長い天然変性領域とLIRを有していました。TEX264はLIR依存的に飢餓でオートファゴソーム上に誘導され、分解を受けていました。酵母のAtg39/Atg40や哺乳類のFAM134B/CCPG1/RTN3/SEC62のように小胞体をオートファゴソーム上に誘導し分解するER-phagyレセプターではないかと考えました。ER-phagy活性をを定量的にモニターする系が当時はなかったので(この系の作製に時間がかかったのに、論文投稿準備中にAtlastin論文に先を越されてしまいました)RFP-GFPに小胞体移行シグナルや残留シグナルを付加したRFP-GFP-KDELプローブを作製し、TEX264とER-phagyの関係を探索しました。TEX264をCRIPSR/Cas9でノックアウトしたところ、ER-phagyの活性は抑制され、TEX264は新規のER-phagyレセプターということが分かりました。TEX264は他のレセプターと比較してLC3/GABARAPファミリーとの結合が強く、細胞におけるER-phagyへの寄与が高かったのです。更に、マウスの組織を用いた解析でユビキタスに発現し、すべての組織でオートファジーによる制御を受けていることが分かりました。
ER-phagyは電子顕微鏡で観察される際、オートファゴソームと小胞体膜の間にリボソームが並ぶことから両者を繋留するレセプターはリボソームよりも長い必要がありました。私たちはTEX264のもつ長い天然変性領域に着目し、天然変性領域を欠損したTEX264は機能しないにもかかわらず、他のタンパク質から天然変性領域を戻した変異体では回復することからアミノ酸配列によらず長く柔軟な天然変性領域は2つの膜をつなぐのに重要であることが分かりました。

残念なことにER-phagyがほぼ抑制された細胞でも明らかな異常は見られませんでした。
ER-phagyがどうして必要なのか、そしてたくさんのレセプターがどのように機能しているのかなど、まだまだ疑問が残ります。

この論文を準備中にASCB(米国細胞生物学会)での発表をしましたが、アブストラクトがネット上に公開されてすぐにWade Harperから同じ研究をしているという連絡がありました。いつ出し抜かれるかと毎日ハラハラしていましたが(半分は水島さんにおどかされていました)、結局一緒にMolecular Cellに掲載が決まりました。オートファジー業界が白熱していることを知り、今後海外学会の発表には細心の注意を払うことにしようと思いました。

本研究は、国立研究開発法人産業技術総合研究所創薬分子プロファイリング研究センターの夏目徹博士らのグループと共同で行いました。
   
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Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局