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PubMedID 19029340 Journal J Cell Biol, 2008 Nov 24; [Epub ahead of print]
Title Parkin is recruited selectively to impaired mitochondria and promotes their autophagy.
Author Narendra D, Tanaka A, Suen DF, Youle RJ
NINDS, NIH  Richard J Youle lab.    田中敦     2008/12/01

Parkin が担うミトコンドリア品質維持機構について
班員の石原直忠先生よりご紹介いただき、こちらのフォーラムに投稿させて頂きます。

今回私達のグループでは、若年性パーキンソン病の原因遺伝子PARK2の産物である、Ubiquitin ligase Parkin がミトコンドリアの品質維持機構に関与している可能性を報告しました。

Parkin はこれまでの論文においてその細胞内局在、機能、基質等、様々な報告がなされて来ました。我々は通常細胞質に存在するParkin が、膜電位を消失したミトコンドリア(つまりはダメージを蓄積したミトコンドリア)特異的に局在し、それに引き続きオートファジーシステムによるミトコンドリア特異的な排除が行われることを見出しました。
この一連のシステムはこれまでに明確ではなかったパーキンソン病とミトコンドリア品質管理の関係性を示唆するものであると考えております。

現在、今回の報告以降の解析を続けているところでありまして、こちらのフォーラムで皆様より忌憚のないご意見、ご感想を頂けたらと思います。どうぞ宜しくお願いいたします。
   
   本文引用

1 基礎生物学研究所 分子細胞生物学研究部門  大隅良典研  壁谷 幸子 マイトファジーにおける Parkin の役割 2008/12/02
 パーキンソン病の原因遺伝子産物 Parkin がマイトファジーの仲介役として働いているという報告、興味深いと思いました。以下、2つ質問です。

 マイトファジーの観点から、一つ。オートファゴソーム内に Parkin で囲まれたミトコンドリアは観察されるのでしょうか? 
 もう一つは、ユビキチンライゲースの観点から。ミトコンドリアに局在する Parkin に、ライゲースとしての活性は必要なのでしょうか? もし、必要ならばそのときの基質は調べられているのでしょうか? 

 いずれにせよ、Parkin が p62 のような働きをしているとすれば、選択的なプロテアソームによる分解と非選択的なオートファジーによる分解は、意外と協調して働いているのかもしれない、と思いました。

      
   本文引用
2 NINDS, NIH  Richard Youle lab  田中敦 Re:マイトファジーにおける Parkin の役割 2008/12/03
早速のコメント、ありがとうございます。

ご質問にお答えします。

1) Parkin がオートファゴソーム内に確認されるかについて。
論文内にも示しておりますように(Fig.5C)、HeLa 細胞に過剰発現したParkin とGFP-LC3、ミトコンドリアのシグナルが三者共局在する像はミトコンドリアの膜電位消失を誘導した際に確認できます。

2)Parkin E3 ligase活性の必要性について。
現在ヒト患者由来の変異をParkin に導入し解析を続けております。Parkin がミトコンドリアへ局在することと、さらに局在後にマイトファジーを誘導することとは分けて考えられるのではないかという知見が得られつつあります。
また最近、PINK1 というパーキンソン病原因遺伝子でミトコンドリア局在型のキナーゼが、Parkinをリン酸化すること、またParkin はRING領域を2つ持ちますが、そのうちの1つがミトコンドリア局在に重要である、との報告がなされました。この情報もParkin の機能解析に重要ではないかと考えています。(BBRC, 2008, Yongsung et al.)
Parkin はミトコンドリア上の何を基質としているかについては解析中でありますが、いくつか興味深い候補を同定したところで、現在解析中です(詳しく書けずに申し訳ありません)。

ミトコンドリアの品質維持にParkin が働くことは大変興味深いですが、今回の報告では未解明な部分が多く残されました。今後もう少し掘り下げた分子メカニズムを報告できると考えています。
      
   本文引用
3 基礎生物学研究所 分子細胞生物学研究部門  大隅良典研  壁谷 幸子 Re:マイトファジーにおける Parkin の役割 2008/12/04
早速、質問に答えていただき、ありがとうございました。

1) Parkin がオートファゴソーム内に確認されるかについて。
確かに、論文中にきれいに示されていました。すみません。免疫電顕があるとさらにインパクトがあると思いました。

2)Parkin E3 ligase活性の必要性について。
いろいろ書きにくいことまで、コメントしていただきありがとうございました。次回のご報告をお待ちしております。
      
   本文引用


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