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PubMedID 20026656 Journal J Cell Biol, 2009 Dec 28;187(7);1083-99,
Title IKK phosphorylates Huntingtin and targets it for degradation by the proteasome and lysosome.
Author Thompson LM, Aiken CT, ..., Marsh JL, Steffan JS
東京工業大学 フロンティア研究機構  大隅良典研    中戸川 万智子     2010/04/05

Huntingtinは、細胞質に局在する機能未知のタンパク質であり、N末端付近にあるpolyQの長さが38残基以上のものは凝集体を形成し、ハンチントン病を引き起こす。異常な長さのpolyQを持つHuntingtin(Htt)は、exon1にコードされる、polyQ以外で65残基のN末端断片(Httex1p)のみで毒性を持つことが知られている。
この論文では、まず、伸長したpolyQを持たないHttex1p のセリン残基S13とS16が、NFκBの活性化に関わるキナーゼ、IKKによってリン酸化されることを示している。一方、変異型Httex1pは、野生型ほど効率良くリン酸化されなかった。著者らは以前、Httex1pのリジン残基がUb化あるいはSUMO化されることを示しているが、それらがS13のリン酸化によって促進された。Ub化はHttex1pの分解に、SUMO化は安定化に寄与するそうだが、IKKによるリン酸化の後、修飾の選択性がどのようになされているかの議論がないのが残念だった。さらに、IKKによるリン酸化は、Httex1pの核への局在、およびシャペロン介在性オートファジーによるHttex1pの分解を促進した。Httは、Hsc70の結合サイトとなるKFERQを持たないが、LKSFQのSがリン酸化されることでLKEFQと類似することで認識されると考えているようだ。リン酸化を受けるHttは全体の一部であるが、97QのHttを発現させても、S13およびS16を、リン酸化を模倣したDに置換することによって、神経細胞の変性を抑制した結果は興味深い。以上の結果から、著者らは、本来、HttはIKKによってリン酸化されると核に移行し、修飾やcaspaseによるプロセシングを受け、プロテアソームあるいはリソソームによって分解されているが、変異型Httの発現によってプロテアソームの活性が低下し、さらには老化に伴って、シャペロン介在性オートファジーの活性が低下することによって、Httが蓄積し、ハンチントン病が発症するのだろうと考えている。

これに合わせてもう一報、Huntingtinに関する論文を紹介したい。

PLoS Genet. 2010 Feb 5;6(2):e1000838.
Deletion of the huntingtin polyglutamine stretch enhances neuronal autophagy and longevity in mice.
Zheng S, Clabough EB, Sarkar S, Futter M, Rubinsztein DC, Zeitlin SO.
http://www.plosgenetics.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pgen.1000838

この論文では、polyQを削った変異型Htt(dQ)を発現させることでオートファジーが誘導され、ハンチントン病に見られる症状が緩和される(さらには寿命も延びる!)という結果を報告している。
論文では、これ以上のことを示していないが、こちらはシャペロン介在性オートファジーではなく、Atg5に依存したオートファジーが誘導されていることや、TORは活性化されていないことから、凝集体を形成するわけでもないdQ変異体がどのようにしてオートファジーを誘導するのか、興味深い。
   
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Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局