Proteolysis Forum
トップ

PubMedID 20723762 Journal Cell, 2010 Aug 20;142(4);637-46,
Title Activation of specific apoptotic caspases with an engineered small-molecule-activated protease.
Author Gray DC, Mahrus S, Wells JA
東京都臨床医学総合研究所・カルパインプロジェクト  反町研    秦 勝志     2010/09/23

カスパーゼを選択的に活性化させる系の開発
カスパーゼはヒトで12種類同定されているが、特にアポトーシス誘導における個々のカスパーゼの機能は明確になっていない。本論文は、培養細胞系でアポトーシス上流シグナル(上流カスパーゼの活性化を含む)をバイパスして、下流カスパーゼを選択的に活性化させアポトーシスを誘導する系の開発について述べている。

高い基質特異性を持つTEV(tobacco etch virus) protease (242アミノ酸からなるシステインプロテアーゼ。活性中心残基はHis46, Asp81, Cys151。)を、N末断片(aa.1-118。N-TEVと呼ぶ。)とC末断片(aa.119-219。C-TEVと呼ぶ。)に分割し、各断片にFrb、FKBP12をそれぞれ融合させた発現コンストラクトを作成する。一方、標的とするカスパーゼ(ここではカスパーゼ3,6,7)に対して、2箇所のprocessing siteのAspをTEV protease認識配列(ENLYFQ)に置換した発現コンストラクトを作成する。これらを発現するstable cell lineを作成し、これにラパマイシン処理すると、まずFrbとFKBP12の相互作用に伴いN-TEVとC-TEVが接近し活性中心を形成する。そしてreconstituteされたTEV protease活性によって上記標的カスパーゼはプロセシングされ活性型となり細胞のアポトーシスが誘導される。
この系を実際に用いた解析結果は残念ながら示されていなかったが、培養細胞内に導入したFrb-N-TEV, FKBP12-C-TEVは安定であり、導入した細胞間における活性化のバラツキがなく、内在カスパーゼと同様のタイムコースでのカスパーゼの選択的活性化がラパマイシン処理で(ほぼ厳密に)制御されることが可能になっており、個々のカスパーゼの機能解析に有用な系になることが期待される。
(Frb:FKBP12 and rapamycin binding domain of mTOR)
   
   本文引用



Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局