PubMedID |
16962653 |
Journal |
Cell, 2006 Oct 6;127(1);125-37, |
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Title |
SIN1/MIP1 maintains rictor-mTOR complex integrity and regulates Akt phosphorylation and substrate specificity. |
Author |
Jacinto E, Facchinetti V, ..., Qin J, Su B |
東京医科歯科大・医歯学総合研究科 細胞生理(水島研) 久万亜紀子 2006/12/22
mTORは細胞成長を制御するセリン/スレオニンキナーゼであり、哺乳動物細胞では機能的に異なる2種類のmTOR複合体 (TORC1, TORC2)として存在する。今回、2つのグループによりTORC2のサブユニットSIN1(酵母Avo1のホモログ)が同定された(もう1編はGene Dev., 20, 2820-2832, 2006)。SIN1 KOマウスは胎生致死であった。SIN1 KO細胞の解析より、SIN1はTORC2複合体の安定性に関わり、TORC2はAktのSer473をリン酸化することが示された。Aktの活性化にはThr308とSer473のリン酸化が必要であり、Thr308のキナーゼとしてPDK1が同定されていたが、Ser473のキナーゼPDK2の実体は不明であった。今回の報告によりTORC2がPDK2であることが遺伝学的に実証された。
本論文でおもしろかったのは、Ser473のリン酸化なしでも、多くのAkt基質のリン酸化は余り影響を受けなかったこと、しかしFoxO1/3aや一部の基質のリン酸化は著しく抑制されたことである。Aktのリン酸化部位によって、異なる下流因子が制御されていることになる。また、AktはTORC1の上流かつTORC2の下流に位置することになるが、TORC2によるAkt Ser473のリン酸化はTORC1の活性には影響を与えない。なぜ同じ役者が、mTORの上下流に登場するのか。mTORシグナル経路はますます複雑である。