PubMedID |
18454133 |
Journal |
Nature, 2008 May 4; [Epub ahead of print] |
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Title |
Essential role for Nix in autophagic maturation of erythroid cells. |
Author |
Sandoval H, Thiagarajan P, ..., Chen M, Wang J |
基礎生物学研究所、分子細胞生物学研究部門 大隅良典研 壁谷 幸子 2008/05/13
赤血球分化におけるマイトファジー
発生中の赤血球は、骨髄を離れて血流中に入る直前に核を押しだし未熟な赤血球(網状赤血球)となり、さらに、1, 2日後ミトコンドリアとリボソームを失い、成熟赤血球となる。このミトコンドリア除去にオートファジーが関与しているという。
Nix は、Bcl-2 family member の一つであり、ミトコンドリアに局在する。これまで、赤血球分化においてNix の発現上昇は知られていたが、その機能は分かっていなかった。今回、Nix 欠損マウスの赤血球分化において、オートファゴソームが形成されるもののミトコンドリアの取り込みが出来ず、細胞質内にミトコンドリアが蓄積し、ROS レベルが高まり、カスペースの活性上昇、アポトーシス誘導、マクロファージによる捕食が起こることが観察された。WTマウスでは、オートファゴソーム内でのミトコンドリアの消化、が見られ、アポトーシスも誘導されない。
上記報告は、昨年末に出されたSchweers RL らの報告 (PNAS, 104, 19500-19505 (2007))とほぼ同じ内容である。彼らの報告との違いは、LC3 とミトコンドリアの共局在、ミトコンドリア膜電位の低下がオートファゴソームに取り込まれるために必須であることをみた点であろう。
それでも、赤血球分化におけるミトコンドリアの除去に本当にオートファジーが関与しているのか、疑問が残る。確か、Atg5 KO における網状赤血球のミトコンドリアは、正常に除去されている (Matsui et al., BBRC, 485-489, (2006))。また、Nix の必要性についても、腑に落ちない。脱共役剤でミトコンドリア膜電位を意図的に低下させると、Nix欠損でも、オートファゴソームがミトコンドリアを取り込みことが出来るのである。
オートファゴソーム形成過程においてNix がミトコンドリア認識にどのように関わっているのか、今後の解析に期待したい。