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PubMedID 18424433 Journal J Biol Chem, 2008 Apr 18; [Epub ahead of print]
Title The COP9/signalosome increases the efficiency of pVHL ubiquitin ligase-mediated hypoxia inducible factor-alpha ubiquitination.
Author Miyauchi Y, Kato M, Tokunaga F, Iwai K
大阪市立大学大学院医学研究科分子制御  岩井一宏研究室    徳永文稔     2008/05/19

CSNパラドックスにメスを
 Cullin型ユビキチンリガーゼ(E3)はNedd8修飾を受けることで活性が増強することが知られる。COP9/シグナロソーム(CSN)はCSN1〜CSN8のサブユニットから構成されるタンパク質複合体で、多くの遺伝学的解析からCSNはE3活性を増強させることが示唆されている。しかし、CSN5にCullinからNedd8を除去する金属プロテアーゼドメイン(JAMMドメイン)が存在し、実際、脱Nedd8活性を有しているため、CSNがCullin型リガーゼを活性化させるメカニズムはパラドックスであり、Cullin型E3はNedd8の着脱サイクルを受けることで活性増強に至ると考えられてきた。
 今回我々は、CSNの影響がほとんど研究されていないVBC-Cul2(pVHL-エロンガンB-エロンガンC-cullin2-Rbx1)に対するNedd8修飾及びCSNの影響を、低酸素応答性転写因子HIF(hypoxia-inducible factor)-1αの酸素依存性分解ドメイン(ODD)をMBPに融合したMBP-ODDを基質として用い、主にin vitro再構成系を用いて解析した。その結果、Nedd8修飾はMBP-ODD上に形成されるポリユビキチン鎖長を伸長すること(長鎖ポリユビキチン鎖形成活性)、一方CSNはポリユビキチン鎖を伸長させないが、単位時間あたりにVBC-Cul2がポリユビキチン化する基質分子数を増加させること観察した。このCSNの作用は、ユビキチン化MBP-ODDとVBCをCul2から解離させて、まだユビキチン化されていないMBP-ODDを識別しているVBCのCul2への結合の促進によること(基質?酵素の触媒回転亢進)を見いだした。さらにHeLa細胞においてCSNをノックダウンするとHIF-αの分解が遅延し、pVHLに結合したHIF-α量が増加することから細胞レベルでもCSNはE3からユビキチン化されたHIF-αを解離させることで分解促進を導くことが示された。すなわち、Nedd8修飾とCSNは相補的な様式でCullin型リガーゼを活性化させることを明らかにした。
 今回の研究成果は、時流に乗った華々しい解析ではないかもしれない。しかし、我々はタンパク質を分解に導くユビキチン修飾系の反応機構の研究は、転写研究における基礎転写の研究と同じく、タンパク質分解研究のコアの1つとなるべき研究ではないかと考えており、今後もこのような生化学的なメカニズム解析にも挑戦し続けたいと思っている。是非、ダウンロードしてFig. 6に提唱したスキームだけも眺めていただければ幸いである。
   
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Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局