PubMedID | 18443221 | Journal | J Cell Biol, 2008 May 5;181(3);497-510, | |
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Title | FIP200, a ULK-interacting protein, is required for autophagosome formation in mammalian cells. | |||
Author | Hara T, Takamura A, ..., Guan JL, Mizushima N |
最近発表したわれわれの論文を紹介させていただきます。
酵母の遺伝学的解析からオートファゴソーム形成に必須である31種類のATG遺伝子が同定されています。その中でも、セリンスレオニンキナーゼである酵母Atg1はAtg13, 17, 29, 31と複合体を形成し、その複合体形成がAtg1キナーゼの活性化とオートファジー誘導に重要な役割を果たしていると考えられています。Atg1のホモログは他の生物種にも高度に保存されているのですが、哺乳動物、ショウジョウバエ、線虫、シロイナズナにおいて他のコンポーネントのホモログはいまのところ見つかっていません(シロイナズナのAtg13を除く)。また、哺乳動物Atg1ホモログ、ULKがオートファジーに関与するかについての詳細については十分な解析が行われていませんでした。
今回われわれはULKのオートファジーにおける機能について検討を行い、ULKが飢餓依存的に隔離膜に局在すること、ULKのキナーゼ活性が飢餓時に上昇すること、ULKのキナーゼ変異体を過剰発現させると隔離膜形成が阻害されることを見出しました。これらの結果から、ULKがオートファジーに関与し、そのキナーゼ活性が重要な役割を果たしていることが示唆されました。さらに、われわれはULK相互作用分子の探索を行い、FIP200(RB1CC1とも呼ばれている)を同定しました。FIP200もまたULKと同様に隔離膜に局在することが分かりました。そこで、FIP200欠損細胞を用いてFIP200のオートファジーにおける役割について解析を行い、FIP200がオートファジーに必須の因子であること、ULKのキナーゼ活性や安定性にFIP200が必要であることを明らかにしました。
タンパク質の一次構造は似ていないものの1)Atg17とFIP200は複数のcoiled-coilドメインを持つ。2)Atg1/ULKのキナーゼ活性に必要。3)Atg1/ULKのPASあるいは隔離膜局在に必要。4)Atg1/ULKのC末の領域がAtg17やFIP200との相互作用に重要である。などの点から、われわれはFIP200がAtg17の哺乳動物カウンターパートである可能性が高いのではないかと考えています。
今後、Atg1複合体形成の中心的役割を果たすAtg13の哺乳動物における機能的ホモログの同定と解析が、ULK複合体のオートファジーにおける役割を解明する上で重要な課題であると考えられます。今回の論文が哺乳動物オートファジーの制御機構を解明する一つのきっかけになればと思っております。