Proteolysis Forum
トップ

PubMedID 18448665 Journal Mol Biol Cell, 2008 Apr 30; [Epub ahead of print]
Title Golgi-resident Small GTPase Rab33B Interacts with Atg16L and Modulates Autophagosome Formation.
Author Itoh T, Fujita N, ..., Yoshimori T, Fukuda M
東北大学大学院・生命科学研究科・膜輸送機構解析分野  福田光則研    伊藤 敬     2008/05/26

 最近発表した私達の論文を紹介させて頂きます。

 今回の論文では、膜輸送を制御する低分子量G蛋白質Rab33A/BとAtg16Lとが直接結合する事を見つけています。Rab33Bはゴルジ体局在のRabでこれまでにER-ゴルジ間の逆行輸送に関わっていると言う論文がいくつか出ていますが、はっきりした機能は分かっていませんでした。FLAG-Rab33Bで免疫沈降するとendogenousなAtg16LだけでなくAtg5-12も共沈してくる事から、Rab33A/Bはコンプレックスを形成しているAtg16Lとも結合します。この結合は活性化型Rab33A/B依存的であり、また他のRabとはほとんど結合しないため、Atg16LはRab33A/B特異的なエフェクターであると考えています。そして、Atg16LのRab33A/B結合領域を細胞に発現させるとオートファジーを阻害します(Atg12の細胞染色とLC3-IIの量で判断しています)。Atg16LのRab33A/B結合領域はCoiled-coilですが、Coiled-coilの中でもAtg16Lのホモオリゴマー化領域(N末側)と、Rab33A/B結合領域(C末側)は異なるようで、Atg16Lと結合せず、Rab33A/Bと結合するC末側の領域を過剰発現するとオートファゴソーム形成を阻害します。逆に、Atg16Lと結合するN末側の領域はオートファゴソーム形成を阻害しません。また、Rab33Bの活性化型をNIH3T3細胞に発現させ、LC3-IIの量でオートファジー活性を調べてみると、オートファジーを完全にではないが阻害していると言う結果になりました。これらの結果はRab33A/BとAtg16Lの結合がオートファゴソーム形成において重要な役割を果たしている事を示唆しているように思えますが、Rab33BのsiRNAの実験では、飢餓誘導のオートファゴソーム形成に関してはっきりした影響を見る事ができていません。
 現在までのデータでは、Rab33A/BとAtg16Lの結合がオートファゴソーム形成の中でどのような役割を持つのかまでは明らかにできていません。今後、Rab33A/Bがどのようにオートファゴソーム形成に関わっているのか、先に示されているER-ゴルジ間の逆行輸送とオートファゴソーム形成の関係、Rab33A/Bの飢餓誘導以外のオートファゴソーム形成への影響も調べていきたいと考えています。

ディスカッション宜しくお願いします。
   
   本文引用

1 基礎生物学研究所・分子細胞生物学研究部門  大隅良典研  中戸川 仁 吉森研・藤田さんたちからの報告との関連について、 2008/05/27
2つのグループの間での共通見解のようなものや、(発表のタイミングが近かったせいでしょうか?)論文中では議論できなかったことなどがありましたら、教えて頂けないでしょうか?たとえば、藤田さんたちもAtg16Lのcoiled-coil regionの過剰発現でオートファジーが阻害されることを観察しており、このような阻害が起こる原因として未知の因子のtitrationを想定していましたが、まさにその因子というのがこの伊藤さん達の仕事で明らかとなったRab33Bであるというように考えておられるのでしょうか(Rab33B以外の因子のtitrationの可能性も議論されていましたが)?

よろしくお願いします。
      
   本文引用
2 東北大学大学院・生命科学研究科・膜輸送機構解析分野  福田光則研  伊藤 敬 2008/05/31
コメントありがとうございます。

Atg16LのLC3脂質化に対する阻害効果とRab33bとの結合能が良く相関するのでRab33bは有力な候補ですが、knock-downで表現型が出ないので、そうだとは断定できないところです。個人的にはそうであって欲しいところですが、、、
Rab33A/B double knock-outで表現型を見るか、Atg16Lのpoint mutationで結合ー阻害の関係が一致するか、を調べる必要があると考えていて、現在進行中です。良い結果が出て皆様にまたご報告できればと考えています。
      
   本文引用


Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局