PubMedID |
18502753 |
Journal |
J Biol Chem, 2008 May 23; [Epub ahead of print] |
|
Title |
Human XTP3-B forms an ER quality-control scaffold with the HRD1-SEL1L ubiquitin ligase complex and BiP. |
Author |
Hosokawa N, Wada I, ..., Okawa K, Nagata K |
京都大学再生科学研究所細胞機能調節学分野 永田和宏研 細川暢子 2008/06/10
小胞体関連分解(ERAD)に関与するER膜上のユビキチンリガーゼ複合体と小胞体レ
最近publishされました、私どもの論文を紹介いたします。
小胞体関連分解(ERAD)は、小胞体内でミスフォールドしたタンパク質がサイトゾルへ引き出された後、ユビキチン化を受けてプロテアソームで分解されるシステムで、小胞体膜に存在するユビキチンリガーゼがこれに関わっています。酵母では、小胞体膜上のE3であるHrd1pが、小胞体内腔ドメインをもつHrd3pと複合体を形成し、ERAD基質の分解を促進することがよく知られています。また小胞体で生合成されるタンパク質の多くはN結合型糖鎖をもった糖タンパク質で、糖鎖のトリミングがタンパク質のフォールディングや分解のシグナルになると考えられています。従って、糖鎖を認識して結合するタンパク質であるレクチンが、糖タンパク質の品質管理に重要な役割を果たしています。最近、酵母のERADを促進するレクチンとして、Yos9pの機能が解析され、 Hrd1p-Hrd3pとYos9pが複合体を形成することが明らかにされました。Yos9pは、MRH (Mannose 6-phosphate receptor homology) ドメインをもち、ヒトには2つのホモログ、OS-9とXTP3-Bがあると考えられています。また哺乳類では、酵母Hrd1pに対応する、HRD1/synoviolinとgp78/AMFRの2つのホモログが知られています。
私たちは、今回、ヒト培養細胞を用いて、これらのE3およびレクチンの機能解析を行いました。その結果、1) XTP3-BもOS-9も小胞体内腔に局在すること(今まで、OS-9はサイトゾルタンパク質であると考えられていた)、2) HRD1-SEL1L (Hrd3pのヒトホモログ)を中心に、XTP3−B (long formと名付けたsplice variantのみ)、OS-9、小胞体シャペロンタンパク質BiPがER膜上に27Sの大きな複合体を形成する、 3) この複合体は、糖タンパク質のみならず、糖鎖をもたないタンパク質のERADも制御している、ということを明らかにしました。gp78や、XTP3-B-short formはこの複合体には含まれませんでした。
少し長くなりますが、この数ヶ月の間に、関連した論文が2報publishされましたので、これらの論文も簡単に紹介します。Christiansonら(PMID: 18264092)は、OS-9, XTP3-BがERADに関与するレクチンであることを初めて報告しました。彼らはOS-9と小胞体シャペロンタンパク質GRP94が結合し、ERAD基質をHRD1-SEL1L複合体に受け渡す、というダイナミックなモデルを提唱しています。ただし、彼らの仮説では、OS-9, XTP3-Bのレクチンドメインは、基質の糖鎖との結合にではなく、SEL1Lとの結合に必要だとしていますが、検討の余地があると思います。一方Barnasconi (PMID: 18417469)らは、小胞体ストレスでOS-9の発現が誘導されること、OS-9はミスフォールドした糖タンパク質のERADのみならず、小胞体への繋留にも関与していると述べています(前述の論文が出たため、慌てて投稿した感が免れません)。
また、その後談を書けることを期待しています。