PubMedID |
17872946 |
Journal |
J Biol Chem, 2007 Nov 23;282(47);33908-14, |
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Title |
Identification of SVIP as an endogenous inhibitor of endoplasmic reticulum-associated degradation. |
Author |
Ballar P, Zhong Y, ..., Shen Y, Fang S |
徳島大学大学院・ソシオテクノサイエンス研究部 ライフシステム部門 長浜正巳 2008/07/03
SVIP: 内在性ERAD阻害因子?
遅ればせながらですが助成期間に遡ってということでしたので、私たちの論文を紹介させていただきます。SVIPはVCP (p97)と結合する新規アダプター様タンパク質として私たちが同定したものです(Nagahama et al. Mol Biol Cell (2003) 14:262-273)。SVIPはp47やUfd1-Npl4といったVCPアダプターと競合的に結合し、また過剰発現により小胞体ストレスに由来すると考えられるオルガネラの膨潤を引き起こします。共同研究者のDr. Shengyun Fangらは、SVIPとERADユビキチンリガーゼであるgp78のVCP結合部位に、互いに相同性の高いアミノ酸配列(VCP-interacting motif: VIM)を見出しました(Ballar et al. JBC (2006) 281:35359-35368)。本論文では、細胞内でSVIPがVCPとgp78の結合を阻害し、gp78-VCP-Derlin1などからなるERAD複合体の形成を抑制、gp78を介するERAD経路のnegative regulatorとして機能することを、SVIPの過剰発現およびノックダウンの系で示しました。
興味深いことに、VCPはアダプターであるUfd1-Npl4と複合体を形成してERADで働くことが広く知られているにもかかわらず、gp78-VCP-Derlin1複合体からはUfd1-Npl4が排除されています。1つのアイデアは、ERADにおけるVCPの働きには、gp78が関与するUfd1非依存的経路とその他のUfd1依存的経路が存在するということです。また、ERADの過程においてVCPとUfd1の相互作用がダイナミックに制御されている可能性も考えられると思います。
私たちが、本研究領域で解析対象にしているUBXD1という新規のVCP結合タンパク質は、VCPとUfd1の相互作用を選択的に制御する因子ではないかと考えて研究を進めています。SVIPやUBXD1のもつ機能の生物学的意義は、このような複数のERAD経路のスイッチング機構に関与することではないかと考えています。今後、同一細胞内に複数のERAD経路が存在する意義にも視点をおいた、包括的なERADメカニズムの解析が進めば面白いと思っています。