PubMedID |
18166655 |
Journal |
J Cell Biol, 2007 Dec 31;179(7);1467-80, |
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Title |
DIAP2 functions as a mechanism-based regulator of drICE that contributes to the caspase activity threshold in living cells. |
Author |
Ribeiro PS, Kuranaga E, ..., Miura M, Meier P |
東京大学薬学部遺伝学教室 三浦正幸研 倉永英里奈 2008/07/03
活性化したカスパーゼを分解するメカニズム
遅ればせながら、助成期間内に報告した私たちの論文を紹介させていただきます。私たちは以前に、発生過程にあるショウジョウバエ組織において、細胞死を誘導しないレベルのカスパーゼ活性が存在し、その活性は神経前駆細胞の数の調節に関与することを報告いたしました(Kuranaga et al. Cell, 2006)。非細胞死機能に関与するカスパーゼ活性化の制御因子としてショウジョウバエIKKeを同定し、IKKeによるDIAP1(E3 ligase活性を持つ細胞死抑制タンパク質)の分解制御機構を提示しました。しかしながら、カスパーゼ活性が細胞死を誘導しないレベルに保つためには、上流からのシグナル制御だけでは不十分であり、直接に活性を抑制するネガティブフィードバック機構の存在が示唆されていました。
本論文で共同研究者のDr. Pascal Meierらは、活性化されたカスパーゼを抑制するメカニズムにDIAP2が関与することを示しました。DIAP2はDIAP1同様にRINGフィンガードメインを有するE3 ligase活性をもつタンパク質で、過剰発現により細胞死は抑制されますが、機能欠失変異体はviableで、発生過程で起こる細胞死が抑制されないことから、その生理的機能として細胞死シグナルへの関与は不明でした(Pascalらによって自然免疫経路への関与はすでに報告されています)。本論文では、活性化されたdrICE(ショウジョウバエカスパーゼ3)がDIAP2タンパク質のAsp100(SVVD配列)を切断し、切断されたDIAP2は活性化drICEと結合することが出来るようになり、活性化drICEを基質としてユビキチン化分解することを生化学的に示しています。加えて、生きた組織においてみられるカスパーゼの活性化が、diap2ホモ変異体ではより強く検出されることを、カスパーゼ活性のFRETインディケーター(SCAT3)により確認しました。このカスパーゼ活性の上昇により、生理的な死細胞の数は野生型と同様であるにもかかわらず、X線照射によって誘導された死細胞数は増加することから、細胞死刺激に高感受性の状態(カスパーゼ活性が細胞死誘導レベルの閾値を超えやすい状態)にあることが示唆されます。
非細胞死機能に関わるカスパーゼ活性化レベルは組織によって異なることが私たちの結果から示唆されていることから、今後はカスパーゼ活性化の導入シグナルおよびその生理的機能について、さらなる解析を要すると考えています。