PubMedID |
18591426 |
Journal |
J Cell Biol, 2008 Jun 30;181(7);1065-72, |
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Title |
Involvement of autophagy in trypsinogen activation within the pancreatic acinar cells. |
Author |
Hashimoto D, Ohmuraya M, ..., Mizushima N, Yamamura K |
熊本大学発生医学研究センター臓器形成分野 山村研一研究室 大村谷 昌樹 2008/07/07
オートファジーが膵炎を発症する
はじめまして。熊本大学発生医学研究センター臓器形成分野(山村研)の大村谷昌樹と申します。私たちは以前から膵炎、特に遺伝性膵炎について研究を行ってまいりました。
膵炎とは異所性(特に膵臓の外分泌機能を担う膵臓腺房細胞内)にトリプシノーゲンがトリプシンに活性化され、その活性型トリプシンが他の消化酵素を活性化することにより始まる、消化酵素による“自己消化”とされています。本来、膵臓の消化酵素は,不活性型の前駆体としてザイモジェン顆粒内に区画されて腺房細胞内では活性化されにくい機構になっているため、どのようなメカニズムで細胞内でトリプシノーゲンが活性化されるのか、に興味が持たれていました。
これまでの研究からカテプシンB等のリソソーム酵素がトリプシノーゲンの活性化には必要であることが知られていましたが、どのようにして、トリプシノーゲンとリソソーム酵素が出会うのか、が不明でした。
この論文では、ヒト膵炎患者及び実験性膵炎モデルで共通にみられる腺房細胞内の空胞がオートファジーに由来していること、膵腺房細胞特異的Atg5欠損マウスでは膵炎を誘発しても膵臓の変化がほとんど見られないこと、Atg5欠損膵腺房細胞内ではトリプシノーゲンからトリプシンへの活性化が起きにくいこと、を述べています。つまり、オートファジーを介して、トリプシノーゲンとリソソーム酵素が出会い、膵炎を発症すると考えています。
疑問点としては1、なぜ膵炎では過剰なオートファジーが誘導される?、2、トリプシノーゲンを活性化するリソソーム酵素は?等を考えていますが、ご意見、ご感想、ご質問お待ちしております。よろしくお願い申し上げます。