PubMedID |
18258863 |
Journal |
Science, 2008 Feb 29;319(5867);1253-6, |
|
Title |
Synaptic protein degradation underlies destabilization of retrieved fear memory. |
Author |
Lee SH, Choi JH, ..., Kim H, Kaang BK |
慶應義塾大学医学部生理学 岡野ジェイムス洋尚 研 多田敬典 2008/07/08
タンパク分解による記憶の消去
現在は、横浜市大に所属しております。記憶の消去にユビキチン・プロテアソーム系の分解が関与する内容の論文を取り上げさせていただきます。記憶が想起されるには、シナプスレベルでのタンパク質合成が関与することが報告されてきましたが、記憶の消去にタンパク質の分解が関与しているかどうかは不明でした。本論文では、恐怖記憶を学習させたラットでは、海馬においてShankなどのシナプス後部タンパク質のポリユビキチン化が上昇しており、さらに恐怖記憶を学習させた後、プロテアソーム阻害剤をラットの海馬CA1領域に注入すると、恐怖記憶が消去されるだけでなく、タンパク質合成阻害剤アニソマイシンによる記憶障害からの回復がみられました。タンパク質分解が忘却メカニズムに関与し、記憶のupdateや再統合が可能な環境を作り出すのに必要であることが本論文で示唆されていました。
タンパク質分解がin vivoで記憶メカニズムに関与していることを示めした興味深い論文であり、今後どのような分子が制御機構として関わっているのか詳細なメカニズムが明らかにされることが期待されます。