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PubMedID 18187572 Journal Am J Pathol, 2008 Feb;172(2);454-69,
Title Inhibition of autophagy prevents hippocampal pyramidal neuron death after hypoxic-ischemic injury.
Author Koike M, Shibata M, ..., Tanaka K, Uchiyama Y
順天堂大学医学部・解剖学第二講座  内山研    小池正人     2008/07/08

低酸素?脳虚血負荷後の海馬錐体細胞の細胞死におけるオートファジーの関与について
本年のAmerican Journal of Pathology 2月号に掲載された論文を紹介致します。
生後7日齢の新生仔マウスにおける低酸素?脳虚血負荷(Hypoxic-Ischemic Injury; H/I 脳傷害)後の細胞死の分子機構に関して、様々なノックアウトマウスを用いて検討を行いました。まずアポトーシスに関しては、カスパーゼ-3やCAD(Caspase-activated DNase)をそれぞれ欠損するマウスを用いて検討したところ、いずれのマウスにおいても対照群と同様にH/I脳傷害を防ぐことが出来ないことが分かりました。また、死に至る神経細胞の核は縮小化するが,典型的なアポトーシスの核クロマチン像を呈さず、凝縮したクロマチン小片が散在性に核に認められました。驚いたことに、CAD欠損マウスの患側の海馬でゲノムDNAのラダーが依然観察されました。このことは、H/I脳傷害で死に至る神経細胞は、カスパーゼ非依存性の細胞死の寄与する割合が大きいこと、CAD以外のDNaseが虚血後の神経細胞死で働いていることを強く示唆しております。次いでオートファジー性細胞死に着目し、オートファジーのマーカーであるLC3の局在、タンパク量を検討したところ、患側の海馬錐体細胞における顆粒状の染色陽性像がみられ、オートファゴソームに特異的なLC3-IIのタンパク量が有意に増加することが確認されました。更にAtg7を脳で特異的に欠損するマウスを用いてH/I脳傷害を検討した結果,対照群と比べて有意に障害が抑制されました。本研究結果は、オートファジー性神経細胞死が存在することを直接的に示した初めての研究です。但し,H/I負荷後の神経細胞死で働くCAD以外のDNaseの候補やオートファジー性神経細胞死の詳細な分子機構については、今後検討して参りたいと思います。
   
   本文引用



Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局