PubMedID |
17767160 |
Journal |
Nat Immunol, 2007 Oct;8(10);1067-75, |
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Title |
T helper type 2 differentiation and intracellular trafficking of the interleukin 4 receptor-alpha subunit controlled by the Rac activator Dock2. |
Author |
Tanaka Y, Hamano S, ..., Sasazuki T, Fukui Y |
九州大学生体防御医学研究所免疫遺伝学分野 福井宣規研 田中芳彦 2008/07/12
DOCK2はIL-4受容体の小胞輸送/タンパク分解を調節しT細胞分化を制御する
Nature Immunology誌に掲載された私たちの仕事について紹介いたします。
ヘルパーT細胞(Th)の分化はサイトカイン受容体のみならずT細胞抗原受容体との協調的なシグナル伝達によって制御されていることが明らかにされています。IL-4はTh2細胞への分化に必須のサイトカインであり、IL-4Rα鎖とcommonγ鎖からなる受容体に結合することで、STAT6のリン酸化を初めとする一連のシグナル伝達経路を活性化しますが、IL-4受容体のタンパク分解に至るカスケードは不明でした。細胞骨格制御分子DOCK2は免疫系特異的に発現するCDMファミリー分子であり、これまでにRacの活性化を介して免疫シナプス形成やリンパ球遊走を制御することが明らかにされています。今回、我々はDOCK2-Racシグナルが微小管動態を介して、IL-4受容体の細胞内小胞輸送とタンパク分解を調節することで、ヘルパーT細胞の分化を制御していることを明らかにしました。
Th2型反応を優位に示すことが知られるBALB/cにてDOCK2欠損マウスを作成したところ、CD4+T細胞依存的およびIL-4受容体依存的なアレルギー性炎症を自然発症することが分かりました。DOCK2欠損CD4+T細胞では、T細胞抗原受容体刺激後のIL-4Rα鎖のdownregulationが障害されており、そのためにIL-4受容体シグナルが遷延化しTh2型反応が優位になっていることを見いだしました。IL-4受容体のエンドサイトーシスにおけるプロセスは障害されていないものの、その後のリソソームへのタンパク分解系に至る選別輸送が障害されリサイクリング経路へ輸送されていることが明らかとなりました。
このような制御機構は、免疫系細胞の様々な受容体において認められる現象と示唆されます。今後は、DOCK2-Racシグナルがタンパク分解系に及ぼす影響を様々な受容体を焦点として解析していく予定です。