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PubMedID 18550769 Journal J Neurosci, 2008 Jun 11;28(24);6264-71,
Title The C-terminal PAL motif and transmembrane domain 9 of presenilin 1 are involved in the formation of the catalytic pore of the gamma-secretase.
Author Sato C, Takagi S, Tomita T, Iwatsubo T
東京大学薬学系研究科 生命薬学専攻 臨床薬学教室  岩坪威研    高木穏香     2008/07/18

γセクレターゼの切断機構解明を目指した機能構造解析
 最近Journal of Neuroscience誌に掲載されました、私たちの論文を紹介させて頂きます。

 γセクレターゼは、アルツハイマー病の発症に関与するアミロイドβを前駆体タンパク質から切断・産生する酵素であり、その切断様式はアルツハイマー病の治療薬を開発する上で非常に重要な情報です。また、脂質二重膜中で加水分解を行うというユニークな性質を有しており、その膜内切断機構は基礎生物学的にも注目を浴びています。治療薬につながるような阻害剤の設計、および膜内切断機構の解明には、γセクレターゼの構造学的知見が必要です。しかし、γセクレターゼは巨大な膜貫通タンパク質複合体であるため、結晶構造解析等の手法に応用できないのが現状で、その構造は未だ明らかになっていません。

 私たちは、substituted cysteine accessibility method (SCAM)という生化学的手法を用いて、γセクレターゼの活性中心サブユニットであるPresenilin1(PS1)の機能構造解析を行っています。この手法は、システインケミストリーにより膜貫通タンパク質中の親水性環境に面したアミノ酸を特定するもので、トランスポーターやチャネルの機能構造解析に広く用いられています。私たちはこれまでに、活性中心アスパラギン酸を含む第6、7膜貫通部位が親水性の活性中心ポアを形成していることをSCAMにより明らかにしました。(Sato et al., Journal of Neuroscience, 2006)

 本論文では、PS1の第8、9膜貫通部位および最C末端の構造解析により、PALモチーフという活性に重要な配列部位および第9膜貫通部位が、活性中心ポアの形成に関与することを示しました。さらに、既知のγセクレターゼ阻害剤とSCAMを組み合わせた解析も試みました。遷移状態模倣型阻害剤を用いた検討により、PALモチーフと第9膜貫通部位の一部が触媒部位であることを明らかにしました。また、基質模倣型阻害剤を用いた検討により、基質が脂質二重膜から親水性の活性中心に移動する際に相互作用し、通過すると考えられる「ラテラルゲート」を、第9膜貫通部位の一部が形成している可能性を示しました。以上の結果から、基質はまずPS1の第9膜貫通部位に結合し、その後PALモチーフ、第9膜貫通部位の一部が形成に関与する活性中心に移動して切断されるという機構が推測できます。今後は引き続きPS1の機能構造解析を遂行し、より詳細な基質切断機構の解明を目指していきたいと思っています。
   
   本文引用



Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局