PubMedID |
18701890 |
Journal |
Nature, 2008 Aug 13; [Epub ahead of print] |
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Title |
Autophagy in thymic epithelium shapes the T-cell repertoire and is essential for tolerance. |
Author |
Nedjic J, Aichinger M, ..., Mizushima N, Klein L |
東京医科歯科大学 細胞生理 水島昇 2008/08/19
胸腺上皮細胞でのオートファジーは免疫寛容に重要
数年前から行っていた共同研究の結果の報告です。GFP-LC3マウスの初期の観察から、胸腺上皮細胞(特に皮質)では飢餓時ではなくてもオートファジーが盛んであるということがわかっていました。栄養と関係ないので、きっとこれは自己抗原の提示に必要なのではないかと考えていました。普通のAtg5KOマウスは生まれてすぐに死んでしまうので、この共同研究ではAtg5KOマウスの胸腺をヌードマウスの腎皮膜化に移植するという実験を行いました。ヌードマウスはもともと胸腺をもっていないので、この移植マウスに現れるT細胞はすべてオートファジーの無い胸腺で教育されたものになります。これらのT細胞のサブセットは基本的に正常ですが、活性化CD4T細胞の割合が多くなります。なぜかマウスの皮膚が薄くなり(この理由はよくわかりません)、腸が巨大になります。組織をみると、腸、肝、肺、Harderian腺などにリンパ球の浸潤が観察されます。このような症状はCD4陽性T細胞のトランスファーでも他の個体に再現できるため、自己免疫性のものであると言えます。以上のことから、胸腺上皮細胞がオートファジー経路で自己抗原をクラスIIMHCに提示することが、自己反応性T細胞の適切な除去に大切であると考えられます。オートファジー・クラスII経路はウイルス抗原の提示などでも利用されていますが、自己抗原の提示というより普遍的な現象にも重要であったわけです。