PubMedID |
18625846 |
Journal |
J Cell Biol, 2008 Jul 14;182(1);129-40, |
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Title |
Quantitative analysis of autophagy-related protein stoichiometry by fluorescence microscopy. |
Author |
Geng J, Baba M, Nair U, Klionsky DJ |
基礎生物学研究所 分子細胞生物学研究部門 大隅良典研 鈴木邦律 2008/08/20
PASダイナミクスの定量化
出芽酵母では,pre-autophagosomal structure(PAS)を介してオートファゴソームが形成される.Atgタンパク質はPASに集結しているものがほとんどであるにも関わらず,それらのPASにおける機能は依然としてはっきりしない.その原因の一つはPASに局在しているAtgタンパク質の数量的な情報が不足していることにある.著者らは蛍光顕微鏡を用いてGFPの蛍光強度をタンパク質の分子数へと変換する方法を開発し,PASに局在するAtgタンパク質の量を見積もった.PASに局在するAtgタンパク質の量は,細胞全体の量の1/10~1/30程度と,ごく一部であった.Atg11の発現量を増やすとAtg8やAtg9がPASにより局在化するようになり,Cvt vesicleの形成が促進される.オートファジーを誘導した場合にも栄養増殖時と比べてPASに局在するAtg8やAtg9の量が増加する.しかし,Atg1, Atg11, Atg16, Atg17, Atg19の量には変化がない.このことから,Atg8やAtg9がPASに多く局在化することがオートファゴソーム形成に重要であることが示唆される.また,Atg8の量は7〜9分周期で増減を繰り返す.これはオートファゴソーム形成の過程を可視化したものだと考えられる.
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重要な点は3つある.ひとつめはPASに局在化しているAtgタンパク質が全体のごく一部であることを定量的に示した点.ふたつめは蛍光強度を分子数に変換することに成功した点.この値はゲノムワイドにタンパク質の分子数を見積もった論文の値と良く一致することから信頼感がある.みっつめはAtg8とAtg9のPAS局在がオートファゴソーム形成に重要であることを示した点である.この論文はこれまでの蛍光顕微鏡観察で得られてきた知見をきちんと定量化して示したことに意義があるのだろう.