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PubMedID 18701681 Journal J Neurosci, 2008 Aug 13;28(33);8189-98,
Title Depletion of 26S proteasomes in mouse brain neurons causes neurodegeneration and Lewy-like inclusions resembling human pale bodies.
Author Bedford L, Hay D, ..., Lowe J, Mayer RJ
首都大学東京 都市教養学部生命科学コース  神経分子機能研究室    斎藤太郎     2008/09/01

アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病など様々な神経変性疾患の病理的な特徴として神経細胞内の封入体が上げられる。この封入体は多くの場合、ユビキチン陽性であることから、神経変性疾患の病理とユビキチン-プロテアソーム・システムとの関係が考えられてきた。

本論文は26Sプロテアソームの19S複合体のサブユニットの一つRpt2をCre/loxPシステムにより脳の部位特異的に神経細胞でノックアウトするマウスを作製して解析を行ったものである。

著者らは、カルモジュリン依存性キナーゼα(CaMKIIα)、チロシン水酸化酵素(TH)のプロモーターでCreを発現する2系統のマウスと掛け合わせることにより、それぞれ前脳、線条体黒質でRpt2が欠損するようなマウスを作製した。

その結果、前脳ノックアウトマウスでは進行性の脳萎縮、モリス水迷路による学習実験で著しい障害などが見られ、マウスは3-4ヶ月齢で死んでしまった。

一方、線条体黒質ノックアウトマウスではTH陽性細胞に封入体が見られ、マウスは生後28日目までには死んでしまった。この封入体はユビキチン、α-シヌクレイン陽性ではあるが、ヒト脳のレビー小体とは構造に違いがあるようである。また、封入体にミトコンドリアが含まれていることが観察され、ヒト病変試料を再検討すると、ヒト封入体でもミトコンドリアが含まれている可能性が示唆された。

哺乳動物で26Sプロテアソームを遺伝学的に機能不全を行ったということで、とりわけ新しい発見があったわけではないと思われるが、著者も指摘している通り、今後、モデル系としての利用ができるのではないだろうか。
   
   本文引用



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