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PubMedID 18768753 Journal Mol Biol Cell, 2008 Sep 3; [Epub ahead of print]
Title The Atg8 Conjugation System Is Indispensable for Proper Development of Autophagic Isolation Membranes in Mice.
Author Sou YS, Waguri S, ..., Tanaka K, Komatsu M
順天堂大学医学部生化学第一講座  木南英紀研    曽 友深     2008/09/30

高等動物におけるAtg8反応系は隔離膜の適切な伸張および融合に必須である。
最近受理された、我々の論文を紹介させていただきます。
オートファゴソーム形成には二つのユビキチン様修飾反応系Atg12およびAtg8(高等動物ではLC3)反応系が必須である。これまでに、Atg5 (Atg12の標的タンパク質)およびAtg7 (二つの反応系の共通のE1様酵素)欠損マウスが作製・解析され、高等動物におけるオートファジーの様々な生理機能が明らかにされてきた。しかしながら、これらマウスはAtg12とAtg8の両反応系の阻害を伴う。今回、我々はオートファゴソーム形成におけるAtg8反応系の役割を解析するために、Atg8反応系特異的E2様酵素・Atg3欠損マウスを作製し解析を行なった。
Atg3欠損マウスは、大きな形態的異常を示さずメンデルの比率で出生したが、出生後1日以内に死亡した。このマウスにおいてAtg8反応系は完全に遮断され、Atg5およびAtg7欠損マウスと同様に哺乳させない条件下において低アミノ酸状態を引き起こした。
Atg3欠損マウス繊維芽細胞 (MEFs)において、Atg12-Atg5-Atg16L複合体は隔離膜への局在を示す一方、隔離膜からの解離は野生型MEFsと比べて有意に遅延していた。驚いたことに、Atg3KO MEFsにおいて一見正常なオートファゴソーム様構造体の形成が確認された。しかしながら、この構造体は、野生型MEFsのオートファゴソームと比較すると小さく、また、Atg3KO MEFsにおいてオートリソソームは確認されないことから、リソソームとの融合が出来ないと想定される。実際、Atg3KO MEFsにおいて、長寿命タンパク質の分解は有意に抑制されていた。連続超薄切片を用いた電子顕微鏡観察では、Atg3KO MEFsに見られる隔離膜の多くは、両端が融合できずに隔離膜が入り組んだ構造を呈することが示された。以上のことから、Atg3欠損は、オートファゴソーム形成における複数の段階に障害を起こすと考えられる。
1) LC3とPEの結合およびLC3の隔離膜へのリクルート不全。
2) Atg12-Atg5-Atg16複合体の隔離膜からの解離遅延 (Atg3KOマウスでは、ある程度Atg12-Atg5の形成障害が起こるが、この解離遅延に影響されるのかもしれない)。
3) 隔離膜の伸張不全。
4) 隔離膜両端の融合不全。
但し、Atg5陽性のドット構造体のde novo生成も、Atg3欠損細胞において減少していたことから、隔離膜新生も障害を受けると考えられる。
Atg3KO MEFsで見られたオートファゴソーム様構造体は、その数は別としてAtg5KO ES細胞やAtg5KOプルキンエ細胞 (Mizushima N, et al., J Cell Biol., 152, 657-668, 2001, Nishiyama H, et al., Autophagy 3, 591-596, 2007)でも観察されること、さらにAtg3KO肝細胞で確認された多重膜構造体はAtg7KO肝細胞やAtg5およびAtg7KOプルキンエ細胞で出現するmultilamellar 構造体に類似していることから(Komatsu M, et al., J Cell Biol., 169, 425-434, 2005, Nishiyama H, et al., Autophagy 3, 591-596, 2007, Komatsu M, et al., Proc Natl Acad Sci USA, 104, 14489-14494, 2007)、Atg12およびAtg8の両反応系は隔離膜の適切な伸張および融合に機能していると考えられる。
最後に、オートファゴソームの膜の起源はオートファジー研究の核心の一つであり、酵母・高等動物を問わず盛んに解析が行なわれている。我々の作製したAtg3KO マウス・細胞が、この研究課題に貢献できればと考えています。
ご意見、ご感想、お待ちしております。よろしくお願いします。

   
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