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PubMedID 18818692 Journal EMBO J, 2008 Sep 25; [Epub ahead of print]
Title Cdk5 phosphorylates Cdh1 and modulates cyclin B1 stability in excitotoxicity.
Author Maestre C, Delgado-Esteban M, ..., Bolanos JP, Almeida A
首都大学東京 都市教養学部生命科学コース  神経分子機能研究室(久永研究室)    斎藤太郎     2008/10/01

神経細胞で機能するAPC/C
私たちの研究グループが注目している神経細胞で機能するCdkファミリーの1つ、Cdk5が神経細胞でAPC/Cの活性調節に関係している可能性を示す論文を紹介します。

改めてご紹介するまでもないかもしれませんが、APC/C(anaphase-promoting complex/cyclosome)はサイクリンBをはじめとする分裂細胞のM期における特異的なプロテアソーム分解に関係するE3としてよく知られています。

そんなAPC/Cですが、分裂しない神経細胞でCdh1結合型のAPC/Cが機能していることがこれまでに報告されています。

本論文は、Cdk5が神経細胞死の過程でCdh1をリン酸化することでAPC/Cを不活性化し、その結果、サイクリンBのタンパク量が神経細胞の核で上昇し細胞死を促進している可能性を示したものです。

神経細胞では細胞死の過程で細胞周期にre-entryする現象が指摘されてきました。著者らのグループはこの論文より前、培養神経細胞でRNAiによりCdh1をノックダウンすると、サイクリンB1タンパクが神経細胞核内で上昇し、細胞死が誘導されることを報告していました。

本論文では以下のような神経細胞死のモデルを想定しています。

1. NMDA型グルタミン酸受容体を介した細胞内カルシウム濃度の上昇、2. カルパインの活性化によるCdk5 activator p35のp25への限定分解、3. 活性化した(核移行した?)Cdk5による核内Cdh1のリン酸化、4.Cdh1の核から細胞質への移行、6. 核内APC/Cの不活性化とCyclin B1の蓄積(Cdk1の活性化?)、7.細胞死(括弧内?は論文では観察していない事項)

この前提として神経細胞では絶えずAPC/Cを介してM期サイクリンが分解されて細胞の生存が維持されているということになります。なぜ分裂しない神経細胞はM期サイクリンの発現を止めるということをしないのでしょうか、不思議なところです。
   
   本文引用



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