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PubMedID 16982691 Journal Mol Cell Biol, 2006 Nov;26(22);8437-47,
Title Regulation of the M-cadherin-beta-catenin complex by calpain 3 during terminal stages of myogenic differentiation.
Author Kramerova I, Kudryashova E, Wu B, Spencer MJ
東京都臨床医学総合研究所 カルパインプロジェクト  反町洋之研究室    尾嶋 孝一     2007/01/24

骨格筋特異的に発現するp94(カルパイン3)の酵素機能不全が肢体型筋ジストロフィー2A型の発症原因であることから、p94は骨格筋細胞に必須の機能を果たしていると考えられている。今回、p94ノックアウトマウスでは、筋管および筋線維1本当たりの核数が増加すること(骨格筋細胞は多核である)、細胞膜に存在するM-cadherin(M-cadherinは筋細胞の融合に関与すると考えられているが、M-cadherinノックアウトマウスでも筋細胞の融合は起こる)およびbeta-cateninの量が多くなること、さらにin vitroの解析においてp94がM-cadherinおよびbeta-cateninを切断することを示した。これらの結果から、ノックアウトマウスではp94が存在しないためにM-cadherinおよびbeta-cateninの量を調節できず、この2つの分子が細胞膜に異常に蓄積することで筋細胞の融合を促進し、核数の増加を引き起こしたと結論している。
しかし、(1)骨格筋細胞においてp94がM-cadherinおよびbeta-cateninを切断している証拠がないこと、(2)骨格筋細胞の融合に関しては不明な点が多いのにもかかわらず、M-cadherinの蓄積によって細胞融合が促進されると結論づけていること、(3) 一般的に筋線維が肥大する(筋線維径の増大)ときに、筋線維当たりの核数が増えると考えられている。しかし、このノックアウトマウスでは核数は増加するが、筋線維径は減少している点がきちんと説明されていないこと、など検討すべき課題が多いように思える。
   
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Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局