PubMedID |
18756251 |
Journal |
Nature, 2008 Aug 28;454(7208);1088-95, |
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Title |
Misfolded proteins partition between two distinct quality control compartments. |
Author |
Kaganovich D, Kopito R, Frydman J |
九州大学生体防御医学研究所 細胞統御システム分野 石谷太研 川村 しのぶ 2008/10/02
誤って折りたたまれたタンパク質は、ユビキチン化の有無によって選択的に運ばれている
この論文では誤って折りたたまれたタンパク質が、ユビキチン化されるか、もしくは凝集するかによって異なる二つの封入体、IPODとJUNQに選択的に運ばれること、さらに二つの封入体の性質的な違いも示している。誤って折りたたまれたタンパク質の細胞内蓄積の中でも、アミロイド封入体はハンチントン病やプリオン病などの神経変性疾患の多くに見られる。本論文では、これらの病気と関連したハンチントンタンパク質やプリオンタンパク質が、真核生物である出芽酵母だけでなくmammalianの細胞であるHelaにおいても選択的にIPODにのみ運ばれることを示している。さらに、以下に示すIPODとJUNQの性質の違いから、実際にアミロイドタンパク質のユビキチン化を促すだけで、JUNQへの選択的な蓄積を促進することを示している。
以上のことより、本論文は誤って折りたたまれたタンパク質が細胞内の品質管理によってどのように制御されるのかを明らかにしただけでなく、ヒトの病気に関連するアミロイド形成タンパク質の封入体への選択的蓄積の機構を解明するためにも非常にインパクトの強い内容であった。また、このようにmammalianの病気の発症機構を明らかにするために、もっとも単純な真核生物である出芽酵母を用いたことで、古典的な転写のON/OFF機構やheat shock法によってクリティカルなデータが得られていることも注目すべき点である。
****性質****
IPOD (insoluble protein deposit) ・・・誤った折りたたみをしたうち凝集性の不溶性タンパク質が蓄積する場所。IPODは液胞周辺に存在し、オートファゴソームAtg8およびHsp104と共局在する。
JUNQ (juxtanuclear inclusion) ・・・誤った折りたたみをしたタンパク質のうち、可溶性のユビキチン化タンパク質が蓄積する場所。JUNQは核近傍のERと共局在しており、26Sプロテアソームに富んでいる。
Hsp104はJUNQにも存在するが、IPODでは蓄積したプリオンタンパク質の脱凝集や断片化を促すのに対して、JUNQでは可溶性タンパク質のリフォールディングや分解のために存在すると考えられている。また、IPODおよびJUNQともに娘細胞には引き継がれない。