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PubMedID 18818209 Journal J Biol Chem, 2008 Sep 25; [Epub ahead of print]
Title Mitophagy in yeast occurs through a selective mechanism.
Author Kanki T, Klionsky DJ
基礎生物学研究所 分子細胞生物学研究部門  大隅研究室    岡本 浩二     2008/10/20

出芽酵母における選択的マイトファジー
近年、オートファジー関連膜動態によるミトコンドリア分解、いわゆるマイトファジーに関する報告が注目されています。出芽酵母においても、マイトファジーが現象として捉えられ、Atgタンパク質以外の関連因子も明らかになってきました。しかし、マイトファジーは選択的に起こるのか、またそうであるならば、どのAtgタンパク質が必要なのかについては、よくわかっていませんでした。Klionskyラボからの今回の論文は、これらの問題について、新しい知見をもたらしています。

アプローチはとてもシンプルです。ミトコンドリア・タンパク質にGFPをつけてやり、呼吸増殖からpost-log、または窒素源(N)飢餓へのシフトという条件で、GFP融合タンパク質のプロセシング(液胞内酵素依存的)をモニターします。筆者らは、このアッセイ系を用いて、様々なAtg欠損変異細胞を解析しました。その結果、マイトファジーの選択性を示唆する3つのポイントを見出しています。第1に、同じN飢餓でも、炭素源の違いによってマイトファジーの効率が異なるという点(バルク・オートファジーでは有為な差はない)。第2に、Atg11がマイトファジーに必須であるということ。Atg11は、ある種の液胞内酵素の生合成系(Cvt経路、選択的オートファジーの一例)には必要ですが、栄養飢餓誘導型の非選択的オートファジーには必須でないことがわかっています。第3に、マイトファジーに関与するAtgタンパク質群は、バルク・オートファジーとも、Cvt経路とも異なる、すなわちユニークであり、オートファジー関連膜動態をマイトファジーに特化させる(選択性を生み出す)仕組みの存在が考えられます。

既に報告されている、酵母のマイトファジーに関与する2つのタンパク質、Aup1やUth1を欠損した細胞についてはデータが示されていません。マイトファジーの分子機構は現象を見る条件によって多様であるのか、それとも基本的に同じなのか、生理的意義も含め、今後の課題だと思います。
   
   本文引用



Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局