PubMedID |
18849965 |
Journal |
Nature, 2008 Oct 5; [Epub ahead of print] |
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Title |
Loss of the autophagy protein Atg16L1 enhances endotoxin-induced IL-1beta production. |
Author |
Saitoh T, Fujita N, ..., Yoshimori T, Akira S |
大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 自然免疫学 審良研究室 齊藤 達哉 2008/10/20
オートファジーと炎症制御
大阪大学免疫学フロンティア研究センターの齊藤と申します。
本研究領域に縁の深い先生方との共同研究の成果ですので、Atg16L1KOマウスの解析結果について投稿させていただきます。特に吉森研の藤田さんには多大な貢献をしていただきましたので、論文では共同の筆頭著者になっています。哺乳類のAtg16L1は水島先生、吉森先生らにより同定され、また人における遺伝子変異と炎症性腸疾患であるクローン病の発症との相関が報告されています。
オートファジーの制御に関して本研究から分かったことは、(1) Atg16L1のCCDは、栄養状態での基底レベルのオートファジー、飢餓状態でのオートファジーに必須である。(2) Atg16L1のCCDは、Atg12-Atg5 conjugateとの高分子量複合体の形成に重要であり、Atg12-Atg5 conjugateの局在を規定している。これらの結果から吉森先生、藤田さんが以前MBC誌で提唱された説が遺伝学的な確証によって支持されました。
さらに自然免疫応答における解析から分かったことは、(1) Atg16L1KOマクロファージでは、インフラマソームと呼ばれるシステムがLPS刺激に応答して異常活性化し、その実行分子であるCaspase-1が炎症性サイトカインであるIL-1betaやIL-18の切断、放出を誘導する。(2) LPS刺激によってLC3ドットが増加することはなく、またAtg7KOマクロファージもIL-1betaを過剰産生することなどから、基底レベルでのオートファジーが阻害されることが異常活性化の原因である。(3) 血球系の細胞においてAtg16L1を欠損したマウスは、DSS腸炎に高感受性を示し、その病状悪化はIL-1betaとIL-18に対する中和抗体で緩和される。
本研究により、オートファジーは炎症応答において重要な役割を果たしていることが示されたと思います。しかしながら、T300A変異とも関係の深いWDRの機能に関してはいまだに未知であり、腸炎に感受性が高くなる理由についてもまだ解析の余地が残っています。今後さらに詰めていきたいと思います。
最後に、TLRの刺激によってオートファジーの誘導は起こらなかった、という点について触れます。過去のTLRによるオートファジーの誘導に関する論文では、ほとんどのデータがマクロファージ様細胞株にGFP-LC3を過剰発現した状態で解析されています。GFP-LC3過剰発現の危険性については以前より意見が出ていたと思いますが、特に免疫応答時のオートファジーについて判定する際には、プライマリーの細胞を用いて内在性LC3ドットの検出を行うことが必須であると思われます。