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PubMedID 18940611 Journal Structure, 2008 Oct;16(10);1562-73,
Title Structural Basis for Ca(2+)-Dependent Formation of ALG-2/Alix Peptide Complex: Ca(2+)/EF3-Driven Arginine Switch Mechanism.
Author Suzuki H, Kawasaki M, ..., Wakatsuki S, Maki M
名古屋大学大学院生命農学研究科応用分子生命科学専攻  牧正敏研    牧 正敏     2008/10/27

カルパインのC末端領域と相同なALG-2とAlixペプチド複合体のX線結晶構造
私たちの発表論文で恐縮ですが、紹介させて頂きます。論文タイトルは表記のようにはなっていませんが、フォーラムに合わせてつけましたのでご了承下さい。m-、mu-カルパインなどconventional calpainのC末端領域は、5つの連続したEF-hand (helix-loop-helix Ca2+結合モチーフ)をもつpenta-EF-hand(以下PEF)ドメインと称され、5番目のEF-hand (EF5)がペアとなり2量体を形成します。PEFファミリーにはカルパイン大小サブユニット以外にもsorcin、grancalcinやALG-2 (apoptosis-linked gene 2、データベースではPDCD6と登録されている)などが属し、ALG-2についても、Ca2+結合型のX線結晶構造解析がなされていました。ALG-2のCa2+依存的相互作用因子であるAlix(ALG-2 interacting protein X)は、多胞性エンドソーム(MVB)形成、HIV出芽、細胞質分裂などにおいてESCRT(endosomal sorting complex required for transport)および関連因子と物理的、機能的に協調作用をするが、ALG-2がAlixとどのような仕組みで結合するのか、その構造的基盤は不明でした。今回、ALG-2の(1)Ca2+遊離型、(2)Ca2+結合型、そして(3)Alixペプチド断片との複合体の構造を解明し、3つの構造をそれぞれ比較することにより、結合メカニズムが明らかになりました。PEFはCa2+と結合してもカルモジュリンのような大きな構造変化がないことは、カルパイン小サブユニット(ドメインVI)の構造解析によって既に知られていたが、ALG-2についても同様でした。ALG-2の場合、EF1、EF3とEF5に結合するが、Ca2+の結合によってEF3とEF5の後半のへリックス(F3とF5)の位置が少しずれる程度である。しかし、EF3のこの小さなずれがEF3とEF4の間のループ上の残基の側鎖の立体配置に影響し、特に、R125の側鎖はCa2+遊離型ではAlixとの結合部位を形成する疎水ポケットを塞ぐが、Ca2+結合型では開くことが分かりました。一方、カルパイン小サブユニットは、カルパスタチンのサブドメインCとCa2+依存的に結合するが、その相互作用領域はEF1-EF2の領域であり、既に報告済みですがCa2+による構造変化領域とも合致します。また、カルパスタチンは両親媒性アルファへリックス構造を形成し、疎水性の高い側面がdVIの疎水ポケットに結合するのに対し、Alix上の結合部位はPPYPが重要なモチーフとなっています。興味深いことにこのモチーフは、細胞質分裂のときに働くCep55 (centrosome protein 55)がAlixと結合する領域と重なっています。一方、EF1とEF3の立体的な相対的位置関係は、カルパインdVIの方がALG-2よりも大きくねじれており、ダイマー間の接触面積がより大きくなっている原因のひとつです。AlixペプチドとALG-2の複合体の解析はZn2+がEF1とEF3にCa2+様の配位をした構造でのみ成功しており、Ca2+結合型では成功していません。結晶作製は非常に高濃度(200mM)のCa2+あるいはZn2+を用いていますが、Zn2+はEF5にはCa2+様の配位をしないことが結果的に複合体の結晶化に都合が良いのかも知れません。ちなみにカルパインはEF5にはCa2+は結合せん。生理的にALG-2のEF5へのCa2+結合が重要かどうかは不明ですが、結合能力が小さいと考えられ、進化的にたまたまCa2+結合能が残っていたと考えるのが妥当と思います。
   
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