PubMedID |
18353967 |
Journal |
Mol Biol Cell, 2008 Jun;19(6);2457-64, |
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Title |
Ubiquitin-proteasome-dependent degradation of a mitofusin, a critical regulator of mitochondrial fusion. |
Author |
Cohen MM, Leboucher GP, ..., Glickman MH, Weissman AM |
九州大学 医学研究院 機能高分子設計学研究室 木口屋祥子 2008/10/31
ミトコンドリア融合因子Mitofusinのユビキチン・プロテアソーム依存分解
ミトコンドリア融合因子Mitofusinの酵母相同因子Fzo1pのプロテアソーム依存性の分解メカニズムが報告されました。ミトコンドリア外膜タンパク質の詳細な分解メカニズムが明らかとなったのは、これが初めてです。
これまで、Fzo1p分解のメカニズムについてはF-boxタンパクであるMdm30pが関与しており、分子内のF-boxモチーフが必要である事が報告されてきました。F-boxタンパクは、SCF型ユビキチンリガーゼのコンポーネントとして基質認識に働きます。その為、ユビキチン・プロテアソーム系のFzo1p分解への関与が疑われましたが、Escobar-Henriquesらは、この分解はユビキチン、SCF型ユビキチンリガーゼ、プロテアソームのいずれにも依存しないものと報告しました(2006 J.Cell Biol. 173, 645-)。これにより、Fzo1p分解にはユビキチン・プロテアソーム系以外の、新たなF-boxタンパク依存的分解メカニズムが働くのではないかと考えられました。
これに対して、今回の論文ではFzo1p分解にユビキチン・プロテアソーム系が関与していることを初めて明らかにしています。
筆者らは、ユビキチン化された内在性Fzo1pを検出し、このユビキチン化は完全なF-boxをもつMdm30pを基質認識部位として含むSCF型ユビキチンリガーゼによっておこる事を示しました。さらに、K48依存的にポリユビキチン鎖をつくる事を突き止めるとともに、プロテアソーム変異株を用いた実験により、プロテアソームがFzo1pを分解している事を示しました。
この報告により、ユビキチン・プロテアソーム依存的なFzo1pの分解メカニズムが見出された事で、ユビキチン・プロテアソーム系がミトコンドリア形態の制御に関わることが明らかとなりました。
現在、私達はミトコンドリア外膜輸送装置のコンポーネントであるTom20の分解メカニズムを解析しており、これまでの研究からTom20の分解にユビキチン・プロテアソーム系が関与しているという結果を得ています。この為、同じ外膜タンパク質であるFzo1pの分解にユビキチン・プロテアソーム系が働いているという今回の報告を、大変興味深く思いました。
なお、先の報告のような、ユビキチン・プロテアソーム非依存的な分解メカニズムの可能性は否定できず、加えて、接合型の酵母Fzo1p分解はMdm30pを必要としないユビキチン・プロテアソーム依存分解であると報告されています。Fzo1pについては細胞のコンディションによって複数の分解メカニズムが存在するのではないかと考えられ、今後の研究での更なる解明が期待されます。