PubMedID |
18716223 |
Journal |
J Neurosci, 2008 Aug 20;28(34);8644-54, |
|
Title |
Wnt regulates axon behavior through changes in microtubule growth directionality: a new role for adenomatous polyposis coli. |
Author |
Purro SA, Ciani L, ..., Siomou E, Salinas PC |
名古屋市立大学大学院医学研究科 再生医学部門 澤本和延研 池田麻記子 2008/11/14
Wnt刺激でおこるmicrotubuleとAPCの局在の変化
Wntはaxonを適切な方向に導き、終末分枝を制御することが知られています。そして、axonの伸展は、microtuble(MTs)の重合と安定化によって引き起こされます。また、欠損によって家族性大腸腺腫(FAP;familial adenomatous polyposis)を引き起こす事が知られているAPCは、Wntシグナルにおけるβ-cateninのレベルを制御しており、細胞骨格の制御に関与していることや、MT plus-endに局在して、MTの安定化に関与することがvitro、vivoで明らかにされています。
Wnts 存在下では MTsの安定性 が増し、シナプスボタンでMTがループ状になることがわかっており、ループ状のMT形成にはAPCなどのMT plus-end-binding proteins(TIPs)が関わっている可能性があるとされており、MTの放射状構造がそのplus endがleading edgeにTIPsにつながれているかのようにaxon伸展に沿って進んでいくことなどが今までの報告で明らかにされています。
しかし、 MTsとAPCの局在のメカニズム、Wntでループ状MTsを生じるメカニズムの詳細は明きらかにされていませんでした。
この論文では、そのメカニズムをmicrotuble plus-end-binding proteins(TIPs)とAPCの局在に着目して明らかにしています。
まず、Wnt刺激でのMTの変化をMT-end-plusをラベリングすることでMTの伸展方向を解析し、前後方向への伸展には変化がなく横切るような伸展が増えて、ループ状になったMTが増加し、MT先端のAPCは減少していることを明らかにしています。
さらにDishevelledノックアウト、APC shRNA、GSK3β阻害剤、転写阻害剤を用いて、
①Wntによるgrowth coneの変化はDishevelledとGSK3βを介して引き起こされる事、②DishevelledノックアウトでもGSK3β阻害でgrowth coneとMTs形状の変化が起こる事、③GSK3β阻害によってβ-cateninが核内蓄積し遺伝子転写を引き起こす事が知られているが、このgrowth coneの変化は遺伝子転写非依存的に引き起こされる事、④MTs-end-plusへのAPCの局在がMTの形状と進展方向に重要であり、その局在はGSK3βによって制御されている事が明らかにされています。
GSK3β阻害によってβ-cateninが核内蓄積し遺伝子転写を引き起こす事が知られていますが、転写阻害剤を用いた実験で、Wnt刺激でのgrowth coneの変化は遺伝子転写非依存的に引き起こされることが、今回証明されています。
β-cateninの機能は遺伝子転写を介したものの報告が大部分を占め、転写非依存的なβ-cateninの機能という考え方は今まで報告がほとんどなく、特に今回の実験においても、β-cateninとAPCの局在の関係については特に確認されていません。
しかし、APCの局在はGSK3βによって制御されている事がわかり、β-catenin が転写非依存的に関わっている可能性が示唆されます。
現在、研究対象としているDiversin蛋白はβ-catenin分解を促進し、non-cannonical Wnt pathwayにも必要とされており、この転写非依存的なβ-cateninの機能は興味深いと思います。