PubMedID |
18948269 |
Journal |
J Biol Chem, 2008 Oct 23; [Epub ahead of print] |
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Title |
RalA functions as an indispensable signal mediator for nutrient sensing system. |
Author |
Maehama T, Tanaka M, ..., Kanaho Y, Hanada K |
国立感染症研究所 細胞化学部 第四室 前濱朝彦 2008/11/18
mTORC1活性化システムへのRalAの関与
本研究班には参加していませんが、水島領域代表よりこのフォーラムのことをお聞きしたので、我々の最近の研究成果を紹介させていただきます。
我々は栄養素(特にアミノ酸)がmTORC1活性化を引き起こすシグナル経路を明らかにする目的で、RNAi法を基本としたスクリーニングによりこの経路に関わるシグナル分子群の同定を行ってきました。本論文では、一連のRNAiスクリーニングから同定された低分子量Gタンパク質のRalAとその活性化因子RalGDSがアミノ酸依存性のmTORC1活性化に必須因子として関与することを報告しています。
この論文で報告した主要な知見は、細胞外アミノ酸に応答してRalAの活性化が起こること、RalAまたはRalGDSのノックダウンがアミノ酸依存性のmTORC1活性化を阻害することの2点になります。この論文ではこれ以上踏み込んだ成果を示すことはできなかったのですが、RalA(またはRalGDS)のノックダウンがインスリンに応答したmTORC1活性化に対してほとんど阻害効果を示さなかったことはアミノ酸シグナルを考える上で興味深いと考えています。
一般にアミノ酸非存在化では(アミノ酸シグナルを阻害した条件下では)インスリンによるmTORC1活性化が起こらない、すなわちインスリンシグナルはアミノ酸要求性を示すと考えられています(我々もこの点は確認しています)。したがってこれらの知見は、アミノ酸を感知してそのシグナルをmTORC1に伝える経路は本論文で示したRalGDS-RalA依存性経路のみではないことを示しています。この仮説は、RalA単独では十分なmTORC1活性化を引き起こさないという点からも支持され、現在我々はこの点を踏まえてさらなる解析を進めているところです。またRalGDSがRas依存性のtumorigenesisに必須因子として関与することを示した過去の知見も興味深く、以上のような知見が栄養素感知システムのtumorigenesisへの関与を明らかにする一つの手掛かりになることを期待しています。