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PubMedID 19119233 Journal Science, 2009 Jan 2;323(5910);124-7,
Title Regulation of neuronal survival factor MEF2D by chaperone-mediated autophagy.
Author Yang Q, She H, ..., Shacka JJ, Mao Z
基礎生物学研究所 分子細胞生物学研究部門  大隅良典研    壁谷 幸子     2009/01/07

神経変性疾患における CMA の役割
 シャペロン介在性オートファジー(CMA)は、バルクな分解のマクロオートファジーと異なり、基質選択性をもつ。これまで、マクロオートファジーの神経変性疾患抑制関与が知られていたが、今回、CMA もまた神経変性疾患に深く関わっていることが明らかとなった。

 近年、心筋特異的な転写調節因子である MEF2D (myocyte enhancer factor 2D) の細胞内レベルが神経細胞の生存に重要であることが明らかになってきた。しかし、このレベル調節における分解機構は不明であった。今回の報告では、MEF2D が核から細胞質へ排出され CMA により選択的にリソソームで分解され、細胞内レベルが調節されていることが明らかとなった。著者らは、CMA 活性因子により分解が亢進すること、その分解が Hsc70 や Lamp2a に依存していること、in vitro における CMA 活性測定においてリソソーム結合だけでなくリソソームへの取り込みがみられることを示している。また、CMA の基質の一つであるα-シヌクレイン(パーキンソン病リスク因子)を過剰発現すると MEF2D の分解が抑制され細胞質内に蓄積した。これは、パーキンソン病患者でみられる MEF2Dの蓄積と一致した。よって、MEF2Dの細胞内レベルの上昇は神経細胞の生存率を低下させ、神経変性疾患を引き起こすようである。

 神経変性疾患において異常なオートファゴソームが観察されるなど、マクロオートファジーの関与はこれまで多く報告されているが、CMA については今回が初めての報告である。しかも、MEF2Dの分解がマクロオートファジーに依存せず、CMA にのみ依存した分解である点は興味深い。本報告は、なんと言っても CMA ならではの in vitro の活性測定が鍵である。しかし、in vivo における CMAの役割については未だ推測の域を出ない。今後、神経変性疾患における CMA の役割がさらに明らかになることを期待したい。
   
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