PubMedID | 19203585 | Journal | Cell, 2009 Feb 6;136(3);521-534, | |
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Title | Bidirectional Transport of Amino Acids Regulates mTOR and Autophagy. | |||
Author | Nicklin P, Bergman P, ..., Finan PM, Murphy LO |
mTORC1は細胞内外の栄養(アミノ酸や成長因子)応答において統合的な役割を果たしている。これまで、インシュリンなどの成長因子に応答し、活性化される分子機構については、多くの知見が得られているが、アミノ酸が mTORC1 を活性化するかどうかはよく分かっていなかった。
今回の報告は、グルタミン酸の排出がロイシンの取り込みを促進し、mTORC1 を活性化することを見いだしたもので、アミノ酸による mTORC1 活性化分子機構を初めて報告したものである。
著者らは、S6K1 と 4EBP のリン酸化を mTORC1 の活性化の指標として用い、以下の点を明らかにした。
1)栄養飢餓状態の細胞にグルタミン酸とロイシン(もしくは必須アミノ酸(EAA))を添加すると mTORC1 が活性化する、
2)グルタミン酸のトランスポーターを阻害すると、その活性化は見られない、
3)ロイシンの取り込みはグルタミンの細胞外への排出とリンクしており、この役割を担う一人二役のトランスポーターを阻害すると、mTORC1 は活性化されない、
4)上記のトランスポーターの阻害は細胞サイズを減少させるだけでなく、オートファジーをも誘導する。
現在のところ、グルタミン酸を介して取り込まれたロイシンがどのように mTORC1 を活性化しているかは皆目検討がついていない状況ではあるが、アミノ酸による mTORC1 活性化経路が存在することが明らかになった点は、これまでの論争を落着させるものではないだろうか。
ロイシンもしくは EAA としている実験が混在しており、他のアミノ酸に対する影響もまだよく分かっていない。従来、哺乳動物細胞におけるオートファジー誘導は、血清を欠失させるよりもアミノ酸飢餓が大きく効いているとされてきた。アミノ酸の取り込みによる mTORC1 の活性化は、これを大きく裏付けていると思う。今後、ますますアミノ酸を巡るシグナル伝達機構が明らかになると、オートファジー誘導機構の解釈も大きく変貌するのではないかと思いました。
1 | 東京医科歯科大学 医歯学総合研究科 細胞生理学分野 水島昇研 貝塚 剛志 | 細胞培養におけるグルタミンの重要性を説明できる? | 2009/03/23 |
グルタミンは非必須アミノ酸であるにも関わらず、培養細胞の生育には非常に重要です。
このことは‘55年にEagle氏が示して以来、広く知られていますが、その理由は現在でもはっきりしていないようです。 しかし今回の論文から考えると、グルタミンの重要性というのは「必須アミノ酸の取り込みにおける必要性」だったのかもしれませんね。 ただ、今回論文に出てきたアミノ酸トランスポーターはSLC7A5および1A5の2つですが、同様の機能を持ったトランスポーターは他にも存在するはずです。 結果的にこの2つが重要だということは示されていますが、彼らがなぜこれらの因子に着目したのかという点、また他のトランスポーターではこの役割を代替できないのかという点については、やや疑問が残ります。 |
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