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PubMedID 19211835 Journal Mol Biol Cell, 2009 Feb 11; [Epub ahead of print]
Title Nutrient-dependent mTORC1 Association with the ULK1-Atg13-FIP200 Complex Required for Autophagy.
Author Hosokawa N, Hara T, ..., Oshiro N, Mizushima N
東京医科歯科大学  水島昇研    原 太一     2009/03/06

哺乳動物オートファジー制御機構の解明にむけて
私達のグループが最近発表した「オートファジーの制御」に関する論文を紹介します。
オートファジーの制御機構の理解は、オートファジー研究の重要課題の一つであります。私達のグループは哺乳動物におけるオートファジーの制御機構を分子レベルで明らかにすることを目的に研究を展開しています。以前にこちらのフォーラムで投稿したように、我々はすでにULK結合因子の探索からAtg17の機能的カウンターパートとしてFIP200を同定しておりました。今回われわれは哺乳動物Atg13ホモログの同定に成功しました。酵母ではAtg1キナーゼ複合体が形成され、この複合体形成がオートファジー誘導の引き金になっていると考えられています。興味深いことに、ULK1-Atg13-FIP200は恒常的に3M Daの巨大な複合体を形成しており、飢餓レスポンスすることはありませんでした。このことは哺乳動物には酵母と異なる独自のオートファジー制御機構が存在する可能性を示唆していると考えられます。そこでULK複合体の制御機構を明らかにするために、われわれは新たなULK結合因子を探索した結果、mTOR複合体の基質認識構成因子であるraptorを同定しました。特筆すべきことは、mTORC1複合体のULK1との結合が栄養依存的であるということです。ULK1とmTORC1との結合は飢餓処理30分で解離し、栄養の再刺激のわずか5分で結合が認められました。また、in vitroの系でULK1やAtg13がmTORによってリン酸化されることを明らかにしました。さらに、in vivoにおいてULK1やAtg13が飢餓後速やかに脱リン酸化されることが分かりました。mTORはオートファジーの主要な抑制因子として知られていましたが、今回の結果からmTORはULK1複合体に直接相互作用することでオートファジーを負に制御している可能性が示唆されました。残念なことに、現段階でこのリン酸化の生理的な役割について明らかにできていません。mTORによるULK1やAtg13のリン酸化部位の同定とその生理的意義の同定が今後の重要な課題ですが、今回のmTORC1とULK1複合体の相互作用の発見はオートファジーの制御機構を明らかにする上で大きな道筋を開くものになると信じております。余談ですが、類似の内容の論文が3報、同時期に報告されような事態になっており、この分野の競争の激化を象徴している1例だと思います。現在、私は水島研を離れアメリカ、ペンシルバニア大学に留学中です。こちらではショウジョウバエを用いて睡眠の研究を行っておりますが、サーカディアンや睡眠の制御にもタンパク質分解機構が密接に関係しており、タンパク質分解系の制御機構の解明の重要性を改めて感じております。
   
   本文引用



Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局