Proteolysis Forum
トップ

PubMedID 19240038 Journal J Biol Chem, 2009 Feb 24; [Epub ahead of print]
Title Calpain hydrolysis of alpha- and beta2-adaptins decreases clathrin-dependent endocytosis and may promote neurodegeneration.
Author Rudinskiy N, Grishchuk Y, ..., Clarke PG, Luthi-Carter R
東京都臨床医学総合研究所  反町洋之研    秦 勝志     2009/03/31

カルパインによるエンドサイトーシスの制御
細胞内輸送小胞であるクラスリン小胞が担うエンドサイトーシスの制御にカルパインが関与するという論文である。
クラスリン小胞は、ドナー膜に対し中核となるadaptor protein (AP-1〜4の4種類あり、各々4量体である)が結合し、そこにクラスリンや様々なアクセサリー因子が集合することで形成される。エンドサイトーシスを担うクラスリン小胞にはAP-2が存在するが、これはalpha-, beta2-. delta2-, mu2-adaptinと呼ばれる4種のサブユニットからなる。
本論文は、アルツハイマー病など神経変性疾患脳におけるNMDA受容体の過活性化とカルパインの過活性化、そしてNMDA受容体がエンドサイトーシスによりリサイクルされるという知見が背景にあると思われるが、脳のライセートやprimary neuronを用いて、m-カルパインがalpha-adaptinとbeta2-adaptinをそれぞれ1カ所限定分解することを示し、限定分解により生じる断片を過剰発現させると、クラスリンのplasma membraneへの移行やtransferrinの取り込みが減少することを示している。さらに、ラット虚血脳やアルツハイマー病患者由来の脳におけるalpha-adaptinとbeta2-adaptinの限定分解亢進を示した上で、神経細胞においてカルパインがadaptor proteinのサブユニットの限定分解を通じて、NMDA受容体のエンドサイトーシスを制御すると述べている。
alpha-adaptinとbeta2-adaptinの限定分解は組織によって様々で、脳以外では脾臓・胃・肺で特に観察されることも示されており、各組織における限定分解の生理的意義は興味深い。また、我々は以前、Golgi-ER間の輸送を担うCOP-I小胞のCOP-I complex(上記adaptor proteinに相当する)のサブユニットであるbeta-COPがカルパインにより限定分解されることを明らかにした。beta-COP限定分解の意義を考える上で参考になる論文であった。
   
   本文引用



Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局