Proteolysis Forum
トップ

PubMedID 19363139 Journal Plant Cell, 2009 Apr 10; [Epub ahead of print]
Title Atg26-Mediated Pexophagy Is Required for Host Invasion by the Plant Pathogenic Fungus Colletotrichum orbiculare.
Author Asakura M, Ninomiya S, ..., Sakai Y, Takano Y
京都大学大学院 農学研究科 応用生命科学専攻  阪井康能研    阪井康能     2009/04/20

ペキソファジー初めての高次機能?植物病原菌の宿主感染
ペルオキシソームを選択的に分解するペキソファジーは、メタノール資化性酵母P. pastorisを用いて、もっともよくそのメカニズムが研究されており、我々は、これまでAtg26 (GRAMドメインをもつステロールグルコシド合成酵素)を同定し(EMBO J 2003)、Atg26をエフェクター分子として用いるPI4Pによるシグナル経路とペキソファゴソーム膜合成過程(JCB 2006)を追跡していました。今回、Atg26を同定後からに開始した、京大・植物病理学研究室の高野義孝博士との共同研究の成果について、報告させて頂きます。
 キュウリなどのウリ科作物に感染するColletotrichum orbiculareは、胞子が葉の上に付着した後、分生子から付着器と呼ばれるメラニンを含んだ細胞を形成して2細胞に分化し、そのあと、付着器から植物体内に侵入します。以前、高野らは、付着器におけるペルオキシソーム合成が、メラニン合成を通して、植物感染に必要なことを明らかにしていました(Plant Cell 2001)。今回の論文は、Atg26を介したペキソファジー分解が、植物感染に必要であることを示したもので、興味深いことにatg8変異株では、付着器形成が不全であるのに対して、atg26変異株は付着器は正常に形成されるものの、植物への侵入が阻害されていおり、general なオートファジー欠損とペキソファジー欠損とは異なる表現形を示していました。また、GRAMドメインや触媒ドメインを欠失させた変異体においては、ペキソファジー欠損、植物病原性欠損が完全に一致していることなどから、ペキソファジーと植物病原菌の宿主感染能の強い相関関係を示すことができました。現在のところ、Atg26がペキソファジー以外のオートファジーにも関わっている可能性は否定できませんが、現在、すでに取得している別のペルオキシソーム膜タンパク質の変異体でも同様の表現型を示すことから、ペキソファジーが直接的に、関与していることは確信しています。
 P. pastorisのペキソファジー変異株は、ペキソファジー以外に何の表現型も示さなかったので、このように植物感染性というドラティック表現型が出ることは予期していませんでした。植物の葉上という、栄養の乏しい自然界における生存戦略として、ペルオキシソーム合成と同様、ペキソファジーは重要な役割を果たしていたわけです。今後、さらにペキソファジーと植物病原性発現の間について、明らかにしていく必要があると思っています。

   
   本文引用



Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局