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PubMedID 19379691 Journal Cell, 2009 Apr 17;137(2);235-46,
Title VMA21 deficiency causes an autophagic myopathy by compromising V-ATPase activity and lysosomal acidification.
Author Ramachandran N, Munteanu I, ..., Ackerley CA, Minassian BA
東京工業大学 統合研究院  大隅良典研究室    鈴木邦律     2009/04/23

V-ATPase活性とオートファジー
V-ATPaseのassembly factorのひとつであるVMA21の変異により,XMEA(X-linked myopathy with excessive autophagy)と呼ばれる空胞を伴うミオパチーが引き起こされている機序を示した論文.XMEA患者のゲノム解析から,原因遺伝子がVMA21であることを特定し,XMEAの主因がVMA21のmRNA量の減少であることを示した.患者の細胞では,V-ATPaseのassemblyが不全となり,細胞のV-ATPase活性が低下する.その結果,リソソームのpHが上昇し,タンパク質分解の活性が低下する.すると,細胞内の遊離アミノ酸プールが減少し,mTORの不活性化が起こり,オートファジーが誘導される.形成されたオートファゴソームは分解されないので,オートリソソームが蓄積していく,という循環が生じる.XMEAで見られる表現型は,VMA21の発現量を正常レベルにまで増やすと回復する.

病態の原因遺伝子を特定したという意味では重要な論文だと思われる.オートファジーの分子機構に関して特に新しい点はないが,細胞内のアミノ酸レベルの制御にオートファジーが寄与していることを改めて認識した.
   
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1 東京工業大学 統合研究院 先進研究機構  大隅良典研究室  岡本浩二 アセチル化された変異Huntingtinタンパク質のオートファジー系による分解 2009/05/11
神経変性疾患として広く知られているハンチントン病の原因タンパク質、Huntingtinの変異型(長いグルタミン・リピートを含む)が、オートファジーによって分解されること、そのプロセスにはタンパク質のアセチル化が重要であることを示した論文。著者らは、ある変異Huntingtinのモデル・タンパク質を用いて、N末444番目のリジン(Lys444)がアセチル化されることを見出し、同様のアセチル化が内在性の変異型Huntingtinにおいても起こっていることを、モデルマウスとハンチントン病患者由来の脳を用いて明らかにした。興味深いことに、Lys444に変異を導入し、アセチル化が起こらなくすると、変異型Huntingtinがマウスの初代培養神経細胞や脳内に蓄積する。逆に、Lys444のアセチル化を促進すると、変異型Huntingtinの消失が顕著に進むことを、ラットや線虫の系で示した。さらに、このアセチル化された変異型Huntingtinの分解にオートファジー・リソソーム系が関与していること、その過程にp62が働いていることを示した。

非病原性よりも病原性のHuntingtinがより効率よくアセチル化される仕組みや、どのようにしてアセチル化されたHuntingtinがオートファゴソームに隔離されるのか、その認識機構と、LC3やp62との相互作用、タンパク質の細胞内局在変化も含め、さらなる展開が期待される。また、オートファジーによって分解される他の基質タンパク質でも、アセチル化が重要なのかどうか、興味深い。
      
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Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局