PubMedID |
19450522 |
Journal |
Cell, 2009 May 15;137(4);773-83, |
|
Title |
Autophagic components contribute to hypersensitive cell death in Arabidopsis. |
Author |
Hofius D, Schultz-Larsen T, ..., Mundy J, Petersen M |
東京工業大学 統合研究院 先進研究機構 大隅良典研 岡本 徳子 2009/06/19
シロイヌナズナの過敏感細胞死とオートファジーの新たな関係?
植物では、感染防御機構として、過敏感反応によって起こる細胞死があり、これまでオートファジーがこの過敏感細胞死の抑制に寄与しているとの報告があった。これは、オートファジー関連遺伝子(BECLIN1/Atg6, Atg7)の発現を抑制した株で、過敏感反応の傷害部位以外でも細胞死の広がりが観察されたことによるものである。
一方で、この論文では、オートファジー欠損株(atg7とatg9)において、感染を導入した部位のみでの傷害にとどまり、過敏感細胞死の顕著な広がりがみられないこと、またToll/Interleukin-1 (TIR)-type immune receptorから、感染防御因子、EDS1(リパーゼ様タンパク質)を介して誘導される細胞死がオートファジー欠損株では抑制されていること等が示されており、著者らはむしろオートファジーが過敏感細胞死に寄与していると主張している。
Toll/Interleukin-1 (TIR)-type immune receptorを介する感染によって、オートファジーの誘導(Lyso Tracker greenによるautophagosome様構造の染色)が見られるものの、EDS1欠損株ではそれが観察されないことから、 EDS1を介した感染による過敏感細胞死はオートファジーに依存していることを示唆している。一方で、Toll/Interleukin-1 (TIR)-type immune receptorを介さない経路の感染を経ると、オートファジー欠損株では過敏感細胞死誘導後の細胞生存率の上昇が観察されるが、細胞カテプシン阻害剤処理を加えることにより、さらに生存率上昇がみられることから、オートファジーと共に、細胞死を促進する別の調節経路の存在が考えられた。
感染防御因子、NDR1を介するcoiled-coil type immune receptorからの感染を経ると、ndr1株でオートファジーが誘導されずに、感染部位以外での過敏感細胞死の広がりがみられることから、NDR1を介した感染による細胞死はオートファジー非依存型であることを示唆している。これらの結果から、著者らは病原性感染から過敏感細胞死に至るメカニズムには感染源に応じたレセプターとシグナル特異的に、オートファジーが過敏感細胞死に寄与するとともに、オートファジーによらない細胞死に関わる経路も存在するというモデルを立てている。
オートファジーの細胞死への貢献について、詳細な分子メカニズムの解明が今後期待される。