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PubMedID 17237771 Journal Nat Cell Biol, 2007 Feb;9(2);218-24,
Title The energy sensing LKB1-AMPK pathway regulates p27(kip1) phosphorylation mediating the decision to enter autophagy or apoptosis.
Author Liang J, Shao SH, ..., Slingerland JM, Mills GB
基礎生物学研究所 分子細胞生物学研究部門  大隅 良典研    壁谷 幸子     2007/02/09

p27のリン酸化の亢進はオートファジーを誘導する
p27はリン酸化型がCdk/cyclin に結合しそれらの働きを阻害する。その結果、細胞周期がarrestすることが知られているが、その機能やリン酸化の制御機構などは明らかではない。報告では、p27 のThr 198 がリン酸化されるとp27は安定化され、リン酸化の亢進は、オートファジーを誘導する。p27をノックダウン した場合、オートファジーを誘導すると、アポトーシスがおこり、細胞死に至る。p27のリン酸化は、cell survival におけるオートファジーを正に制御しているようである。
最近、このようなオートファジーの誘導に関した報告が多い。これらの報告の信憑性は、「オートファジー」をどのように評価しているか、に依存していると思う。今回の論文のようにMCF7 細胞を用いているにも関わらず、GFP-LC3 のドットの増加により「オートファジーの誘導」としている報告は、信憑性に欠ける。今後、正しく「オートファジー」が評価されるようになることを期待する。
   
   本文引用

1 東京医科歯科大学医歯学総合研究科  細胞生理学分野  水島昇 ?? 2007/02/11
 代謝ストレス時にはLKB-AMPK経路が活性化され、それがp27を安定化し(T198のリン酸化を通じて)、さらにそれがオートファジーを誘導して栄養を補う。p27がないと代謝ストレスに耐えられなくてアポトーシスに陥る(膜透過性TCA基質であるメチルピルビン酸でレスキューされる)という論文。でも壁谷さんご指摘のようにオートファジーの評価にかなり難がありそうでーす。
 決定的なのはFigS4dのLC3-IIと書いてあるバンドで、これはGFP-LC3-IIにしては小さすぎ、内因性LC3-IIにしては大きすぎで、どちらでもありません。これをLC3-IIとして定量しているのであれば、全編通じて信用性は低いと思います。その他、血清飢餓によってp27がリン酸化され安定化されると述べられていながら、そうは見えないところがあるなど(Fig3a)、差がわずかというデータも多いようにみえます。Fig4aの最上段は何のウェスタンか記載がなかったり、FigS4はパネルeが欠落していたりと、論文としての体裁もよくありません。
 そもそもAMPKのオートファジーへの関与は議論の多いところです。これまではSeglenらの抑制説が有力でしたが、最近Meijerが促進説を出しています。いずれにしても生理的な条件下での役割はまだ不明な点が多いと思います。MEFにAICARをかけるとむしろ抑制するのが普通だと思います(図5の電顕結果と逆)。
 またこの論文ではPI3K阻害剤であるLY294002でオートファジーが誘導されるとなっていますが、どなたか経験ありませんか?
      
   本文引用


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