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PubMedID 19164769 Journal Proc Natl Acad Sci U S A, 2009 Feb 3;106(5);1554-9,
Title A calpain unique to alveolates is essential in Plasmodium falciparum and its knockdown reveals an involvement in pre-S-phase development.
Author Russo I, Oksman A, Vaupel B, Goldberg DE
東京都臨床医学総合研究所  カルパインプロジェクト    反町 洋之     2009/08/18

マラリアのカルパインも悪者?
少し古いですが誰も紹介しないようですので。

ゾウリムシ(繊毛虫)やヤコウチュウ(渦鞭毛植物)を含むアルベオラータには、アピコンプレクサ類/門のマラリア(P. falciparum)やトキソプラズマなど人畜に多大な被害を与えるものも含まれています。マラリアにはカルパインの遺伝子が一つ(Pcalp)だけ存在し、アピコンプレクサ内でその構造が良く保存されています。筆者らはこのKOを試みましたが、組み換え体は取れず、FKBPを用いたタンパクレベルでのノックダウン法により、PCALPが無性生殖期の細胞周期(G1期)の調節に関与する必須遺伝子であることを示しました。マラリアには特効薬(キニーネなど)がありますが、カルパインをターゲットにした薬剤は、今までの薬剤耐性原虫を含め、アピコンプレクサの全ての病原性原虫に適応可能のため、大変有望であると結んでいます。

実は、PCALPは酵母Cpl1、カビPalB、ヒトPalBH/calpain 7の仲間です。PalBファミリーに限らずカルパインと細胞周期の関係が噂されながら、今まで決定的な報文は無かったため、今後のブレークスルーとなる可能性があります。筆者らは、PCALPが核にあること、活性中心のCysが必須らしいことを示しており、カルパインの活性の重要性がまた一つ明らかになったわけです。残念ながらその基質は見出していません(カルパインではありがちなことですが…)。それにしても「カルパインを阻害したら良い」という話が多いですね。
   
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