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PubMedID 19783656 Journal J Biol Chem, 2009 Sep 25; [Epub ahead of print]
Title Differencial involvement of ATG16L1 in Crohn's disease and canonical autophagy: analysis of the organization of the ATG16L1 complex in fibroblasts.
Author Fujita N, Saitoh T, ..., Noda T, Yoshimori T
大阪大学、微生物病研究所、細胞制御分野  吉森研    藤田尚信     2009/10/14

Atg16L1とクローン病
最近受理された私たちの論文を紹介させて頂きます。

原因不明の炎症性腸疾患であるクローン(Crohn)病に感受性を示す1塩基多型(SNP)がオートファジー関連因子Atg16L1の C末端側に存在するWDリピートドメイン中に見いだされています(PMID; 17200669,詳しくは以前に水島先生が投稿されたスレッドを参照して下さい)。WDリピートドメインは多細胞生物のAtg16Lにのみ見られ、出芽酵母などの単細胞生物のAtg16には見られません。細胞内に侵入した病原性微生物の排除にオートファジーの機構が関わっていること、またクローン病と病原性微生物の関与が示唆されていることから、クローン病型変異(T300A)は異物に対するオートファジー能に影響を与えるのではないかと推測されています。今回私たちは、Atg16L1欠損MEF細胞にクローン病型変異体やWDリピートドメイン欠損変異体を安定的に発現させて、Atg16L1のWDリピートドメインの機能を解析しました。その結果、以下のことが明らかになりました。
1) 細胞内のAtg16L1量はユビキチンプロテアソームシステムにより厳密にコントロールされている。
2)Atg16L1複合体はAtg16L1とAtg12-Atg5結合体をそれぞれ2分子づつ含むヘテロダイマーを形成している。
3)Atg16L1のWDリピートドメインは飢餓誘導性のオートファジーに必須ではない。
4)T300A変異またはWDリピートドメインの欠損はサルモネラやA群連鎖球菌に対するオートファジー能にほとんど影響を与えない(この結果は先の報告[PMID; 18852889, 19747213]と食い違います)。

予想に反して、我々の実験系ではクローン病型変異の導入により病原性微生物に対するオートファジー能に影響が見られませんでした。クローン病型SNPの影響が細胞種特異的である可能性も考えられますが、T300A変異がAtg16L1複合体のオートファジー以外の機能に影響を与えている可能性も残されています。今後、クローン病とAtg16L1の関連を詳細に検討するためにAtg16L T300A変異体のノックインマウスの解析が有用であろうと思います。
   
   本文引用



Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局