PubMedID |
19550147 |
Journal |
Autophagy, 2009 Aug;5(6);795-804, |
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Title |
Autophagic degradation of nuclear components in mammalian cells. |
Author |
Park YE, Hayashi YK, ..., Nonaka I, Nishino I |
国立精神・神経センター神経研究所 疾病研究第一部 林 由起子 2009/11/09
オートファジーによる核成分の分解(nucleophagy)
核ラミナの主要構成成分であるA型ラミンをコードする遺伝子LMNAの変異は、Emery-Dreifuss型筋ジストロフィー(AD-, AR-EDMD)、肢帯型筋ジストロフィー1B型(LGMD1B)などの骨格筋疾患の他、拡張型心筋症、リポジストロフィー、早老症候群など様々な疾患をひきおこすことが知られており、ラミノパチーと総称されています。一方、核内膜タンパク質エメリンの遺伝子(EMD)の変異もX-EDMDやLGMDの原因となることから、核膜タンパク質の異常による疾患を総称して核膜病と呼んでいます。
私たちは、核膜病筋疾患患者さんの骨格筋組織で著しい核の形態変化とともに、核近傍の空胞形成がしばしば認められることを見いだしました。同様の強い核の変化は核膜病のモデルマウスでも共通に認められます。そこで核近傍で認められる空胞に注目し、その形態からオートファジーの関与を考え、核膜病モデルマウス皮膚線維芽細胞を用いて検討いたしました。
その結果、核近傍の空胞はオートファジー関連分子が集積しており、自己貪食空胞であることが示されました。この空胞はしばしば核よりも大きく、また核成分を内包していることも明らかになりました。核膜病細胞でオートファジーを抑制すると、核の形態変化はさらに強くなり、細胞生存率も低下することから、オートファジーは細胞保護的に働いているものと考えられました。
このような核成分を内包する巨大自己貪食空胞は核膜病細胞のみならず、まれながら野生型細胞でも観察されることから、核膜病に特異的な変化ではないと考えられます。本研究は哺乳類細胞で核成分がオートファジーによって分解されうることを初めて明らかにしたものです。