PubMedID |
19778961 |
Journal |
Microbiology, 2009 Sep 24; [Epub ahead of print] |
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Title |
Autophagy-deficient Schizosaccharomyces pombe mutants undergo partial sporulation during nitrogen starvation. |
Author |
Mukaiyama H, Kajiwara S, ..., Nakamura T, Takegawa K |
九州大学大学院農学研究院 発酵化学研究室 竹川 薫 2009/11/09
窒素飢餓だけ認識していて大丈夫か?分裂酵母は
九大・竹川です。分裂酵母のオートファジーに関する最近アクセプトされた我々の論文を紹介させていただきます。
我々は分裂酵母を用いた異種タンパク質生産に関する研究を行っております。もし分裂酵母の細胞質で異種タンパク質を生産した場合、液胞への輸送経路をブロックしてやれば液胞での異種タンパクの分解が阻害されて高生産が期待できます。そこで分裂酵母におけるオートファジーやCVT経路の解析を行うことにしました。本論文で得られた結果としては(1)分裂酵母のATGホモログ遺伝子13個の破壊株を取得し、Atg8-GFPのプロセッシングを調べることで、これらの遺伝子全てがオートファジーに関与していることを明らかにした(4)分裂酵母のオートファジーは出芽酵母とは異なりグルコース飢餓やラパマイシンの添加では起こらず、窒素飢餓特異的に起こることがわかった(3)分裂酵母atg破壊株では実験に用いられるロイシン要求性株では胞子形成はほとんど見られないが、アミノ酸要求性のない親株でatg破壊株を作ると、約30%程度の細胞で胞子を作ることが出来る。最初はロイシンが胞子形成に重要なのかと思いましたが、アルギニンなどの他の栄養要求性株でも同じ表現型が見られることからロイシン特異的な現象ではないことがわかりました(4)では胞子形成が見られない70%の細胞がどのような状態になっているのか胞子形成過程を詳しく調べたところ、どの細胞も同じように胞子形成へ向かうのですが、細胞周期依存的ではなく「ダラダラ」と途中で停止してしまうことがわかりました。これはあたかも胞子形成に必要なアミノ酸が途中で足りなくなってしまい、胞子が作れないで苦しんでいる(?)状態なのでしょうか。興味深いことに一倍体のatg破壊株で窒素飢餓条件にしたらすぐ死んでしまうのかと調べたところ、驚くほど長生きで調べた限り窒素飢餓培地で20日以上は生きています。これは最近柳田先生が研究されている「quiescence」の状態に細胞が入っているからだと思います(酵母版無我の境地?)。分裂酵母の特徴としてCVT経路に必須なATGホモログ遺伝子が存在しません。では分裂酵母は本当にCVT経路が存在しないのか?分裂酵母には2つしか存在しない液胞膜アミノ酸トランスポーターAvt3とAvt5が液胞からのアミノ酸の細胞質への排出にどのように関与しているのか?さらにATG32ホモログがない分裂酵母でミトコンドリアの分解をどのように行っているのか?分裂酵母はERストレスをどのように感知してERを分解できるのか?分裂酵母に特有なAtgタンパクの機能が存在するのか?等々、解明すべき課題がたくさん見えてきました(ネタバレ)。またここで発表できるようにがんばります。