PubMedID |
19549169 |
Journal |
Genes Cells, 2009 Jul;14(7);861-70, |
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Title |
Lag-phase autophagy in the methylotrophic yeast Pichia pastoris. |
Author |
Yamashita S, Yurimoto H, ..., Oku M, Sakai Y |
京都大学大学院農学研究科 阪井康能研 奥 公秀 2009/11/10
Pichia pastorisのメタノール培養誘導期に誘導されるオートファジー
酵母のオートファジー話が続きますが、ここで私たちの発表論文について紹介いたします。
メタノール資化性酵母 Pichia pastoris 遺伝子発現系は、現在、知られている最も強力な真核蛋白質生産系の一つで、メタノール培地へのシフトによるメタノール誘導性発現が一般に用いられています。我々は、これまで、メタノール培地で誘導したペルオキシソームがグルコースやエタノールへの培地変換によって分解される、ペキソファジーについての研究を行ってきましたが、本論文では、代謝変換のために蛋白合成が活発に行われる、メタノール誘導時、特にlag期で、オートファジーが誘導されることを見いだし解析しました。これまで窒素源飢餓を含め定常期でのオートファジー経路はよく知られていますが、酵母細胞が分裂を開始する前の、lag期においてオートファジーが起こること(LPA)を示した初めての報告です。LPAは、PpAtg11 またはPpAtg17の単独破壊では、完全に停止することはなく、メタノール誘導後3 hまでの早い時期には、PpApe1 をカーゴとするPpAtg11に依存したCvt経路が、その後、PpAld6をカーゴの一つとするPpAtg17に依存したオートファジーの誘導が観察されます。興味深いことに、メタノール培地での生育阻害は、Atg11破壊株では見られず、PpAtg17破壊株のみで見られ、PpAld6を破壊することによりlag期が短くなったことから、細胞はPpAtg17依存的に、PpAld6を積極的に分解することにより環境適応していると考えられます。このように、強力な蛋白質合成を行いながらも、不足するアミノ酸を、eIF2αのリン酸化を介して、LPAにより補っていることも明らかとなりました。まさしく細胞内タンパク質の“経済”を自己の分解によって、何とかやりくりしている姿を目のあたりにした感じです。PpAtg26が、PpAtg17依存的な経路に働いていることがわかっていますので、今後は、PI4P-シグナルとLPAとの関係を明らかにしたいと思っています。