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PubMedID 19671920 Journal Blood, 2009 Aug 11; [Epub ahead of print]
Title Specific iron chelators determine the route of ferritin degradation.
Author De Domenico I, Ward DM, Kaplan J
大阪大学 医学系研究科   医化学教室(岩井一宏研究室)    浅野 剛史     2009/11/15

鉄貯蔵たんぱく質フェリチンの分解経路 〜オートファジーとプロテアソームの両方?
鉄は必須元素であるが過剰にあると生体分子に傷害を与えるため、過剰時には細胞質に存在する鉄貯蔵たんぱく質フェリチンの発現が増加し、余剰な鉄が貯蔵されて毒性が回避される。一方で細胞が鉄欠乏に陥った場合、フェリチンに貯蔵されている鉄が取り出されるのか、また取り出されるとしてその経路はあまりよく分かっていない。

 この論文ではフェリチンの分解経路からこの問題に取り組んでいる。具体的には鉄のキレート剤(=鉄をトラップする薬剤)のDfo(deferoxamine)を添加して細胞内を鉄欠乏にしてフェリチンたんぱく質の動態を追っている。

1) Dfoを添加するとフェリチンは分解され、このときDfoのリソソーム蓄積とLC3のドットの蓄積が誘導されていた。つまり、
「Dfo添加→Dfoがリソソームへ→オートファジー誘導→フェリチンが分解」という流れである。このオートファジーにはmTORやCMAの関与はなさそうであった。

2)また3-MAでオートファジーの阻害剤した場合、MG132でプロテアソームの阻害剤を同時に行うとフェリチンの分解が抑制できたことから、フェリチンは状況によってはプロテアソームでも分解されうると考えた。

この論文ではDfoによって細胞を鉄欠乏にすると特異的にオートファジーが誘発されるとしている点は興味深いが、そのメカニズムは不明である。選択的なオートファジーが誘起されるのか?また仮に鉄を貯蔵したフェリチンがプロテアソームで分解されると、プロテアソームは鉄によってダメージを受けてしまうのでは?疑問は色々あるが「貯蔵」機能を担うたんぱく質の運命を、その分解経路から考えている点では面白いと思う。
   
   本文引用



Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局