PubMedID |
19910927 |
Journal |
EMBO J, 2009 Nov 12; [Epub ahead of print] |
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Title |
SCF(Dia2) regulates DNA replication forks during S-phase in budding yeast. |
Author |
Mimura S, Komata M, ..., Shirahige K, Kamura T |
名古屋大学大学院理学研究科 生命理学専攻 分子修飾制御学講座 嘉村巧研 三村 覚 2009/11/18
SCFDia2によるDNA複製フォークの制御
最近受理されました私たちの研究を紹介させていただきます。
細胞が増殖するためにはDNAを正確に複製し、娘細胞に分配することが必須です。複製の場であるDNA複製フォークには多数の蛋白質が集合しており、それらの蛋白質はS期の間、高度に制御されています。細胞は、DNAに傷害などによりDNA複製が正常に進行できない場合においても、複製を完了しなければなりません。そのためには、複製フォークを安定に停止させ、障害を取り除き、さらに複製を再開させるという制御が必要ですが、その分子機構は不明な点が多いのが現状です。私たちの研究室では出芽酵母のF-box蛋白質の機能解析を行っておりますが、そのなかの一つDia2はその欠失株がDNA傷害剤に感受性を示すことから傷害をもったDNAの複製に関わることが考えられていましたが、その分子機構は不明でした。私たちはDia2の機能を明らかにする目的で改変を施した酵母ツーハイブリッド法によりDia2に結合する蛋白質をスクリーニングしました。その結果、複製フォークの構成成分であるMrc1, Ctf4, Mcm2を単離しました。Dia2にはN末端にTPRモチーフ, C末端にLRRモチーフを持っていますが、これらの複製関連蛋白質は全てTPRモチーフに結合しました。このうち、Mrc1, Ctf4に関してはin vitro, in vivoの両方でSCFDia2の基質となりうることを示しました。Dia2のTPRモチーフは通常はDia2の機能に必須ではありませんが、特殊な条件ではDia2の機能に必須となります。私たちはさらにTPRがDia2の安定性の制御に関わっていることを見いだしました。さらに、ChIP-on-chip法によって、Dia2が複製フォークに局在し、ヌクレオチドが枯渇した際の複製フォークの進行の制御に関わることを見いだしました。
私たちの報告と時を同じくして2つの研究室からDia2のTPRモチーフに関する論文が報告されました。Kile and KoeppはTPRがDia2の安定性に関与していることを示し、(Mol. Cell. Biol.) Morohashi, Maculins and LabibはTPRとMrc1およびCtf4の結合がDia2の複製フォークへの局在に必要であることを示しています。(Curr. Biol.)
これらの結果から、複製フォークの制御にユビキチンリガーゼが働いていることを提示できたと考えています。私たちはMrc1, Ctf4がDia2によってユビキチン化を受けることを示しましたが、その生理学的意義は不明です。今後はDia2の真の基質の同定に研究の焦点が移って行くと思われます。