PubMedID |
20093466 |
Journal |
Science, 2010 Jan 22;327(5964);425-31, |
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Title |
The genetic landscape of a cell. |
Author |
Costanzo M, Baryshnikova A, ..., Andrews BJ, Boone C |
東京都臨床医学総合研究所 カルパインプロジェクト 反町 洋之 2010/02/04
酵母カルパインの恒常的機能?
先月の後半の論文なので既に読まれた方も多いと思いますので、ここではカルパインに絞って紹介します。また、技術的なことはほとんど省きましたので、興味有る方はお尋ね下さい。
本論文は、S. cerevisiaeのほぼ全遺伝子の間のgenetic interaction(GI)を、コロニーの大きさを指標としてマップしたものです。Synthetic Genetic Array (SGA)という手法で、計600万のGIを解析しました。理論上3,600万(6,000×6,000)の1/6ですが、ほぼ全遺伝子を網羅しています。ある遺伝子AのKOのコロニー径が野生型の80%、Bが70%であったとき、A, B二重KOで大きさが56%なら両遺伝子にGIは無く、大きい時positive interaction(+I)、小さい時negative interaction(-I)と考えます。合成致死が最も強い-Iとなります。
さて、論文では図らずも筆者たちが、オートファジー、内膜輸送系、ERAD及びカルパインCpl1/Rim13を含む経路のクラスターを例にとり、今回の解析で明らかとした未知遺伝子などを紹介しています。Cpl1では、Rim経路のRim8, 9, 20, 101, Dfg16, Vps20はもとより、カビ相同経路のPalCホモログのYgr122wと+Iクラスターを作ります。さらに、膜タンパク質のRim9, Dfg16と共に、ヒストン脱アセチル化酵素複合体サブユニットでありDNA結合タンパク質のSnt1をはじめ、核酸と相互作用するSgf73, Stp1, Bud31とも+Iクラスターを作ります。Rim経路の遺伝子同士の+Iは、非ストレス状態でRim経路、特にRim9-Dfg16-Cpl1が何らかの恒常的な機能を果たす事を示唆します。
一方、Rim経路の遺伝子と-Iクラスターを作るものに、Fe代謝に関与するFtr1, Fra1、核酸と相互作用するIxr1, Msc1, Pho23, Dst1, Rpl26b, Nhp10, Ygl149w, Ypl205cなどがあります。これらは、Rim経路の恒常的機能と並行な経路を形成する可能性があります。
論文ではさらに低分子化合物をKO arrayにかけた際のスペクトルと、二重KOのそれをクラスタリングして化合物の標的を予測しており、エロドキシンという新規分子の標的がEro1であることを示しています。
カルパインに関してのみでもかなり読み応えのあるデータでしたので、プロテアソームやオートファジーのように数多く遺伝子・機能があるものは大変だと思いますが、なかなか興味深いデータだと思いました。